Blog

蔵満先生の『奄美食(うまいもの)紀行』

  鹿児島の蔵満先生の本です。
  10年ほど前から,ホームページやメルマガで大変有名な先生です。昨年の冬に鹿児島のイベントで初めてお会いして,この夏にまたお会いできました。

  教師でありながら,『奄美食紀行』(南方新社)というエッセイ的な民俗学的な本を書いています。たいしたものです。
  
  本の中程に,「ミキ五種を飲む」の章があります。ここに,響いてくる一言を見つけました。

「名刺の肩書きにミキ評論家を付け加えることが目下の目標だ」  
  
  これです。
  これが専門家への道です。

  実際にお会いしてお話を伺ったら,次から次へと奄美のお話が出てきます。お話をしたお店が鹿児島中央駅から少し行ったところの,奄美のお店でしたので,食材を見ながら,どんどん話が進んでいきます。
  「通」は違うと思った次第です。

  蔵満先生から伺った話を,もっと濃くしたのが,この本です。

  もう一つ,私が気に入ったところをお話しします。  
  大正14年生まれのミチヨさんの談話に,私のアンテナが反応しました。
  「昔は正月にパンツとズボンを買い換えたよ。普段はなかなか買えないからね」

  すぐに思ったのが,「明治政府の影響」です。
  明治になってから,奄美にも日本の政府の影響が強く出始めました。それまでは,独自の文化でのんびりと時を刻んでいたのですが,明治政府は隅々まで中央の考えを広めていきました。その役割を大きく担った一つが,小学校です。
  当時のお正月は祝日なのですが,「登校日」でした。祝日というのは,「国のお祝いをする日」です(祭日は「国のお祭りをする日」です)。登校して,御真影を仰ぎ,教育勅語をきいて,帰ります。校長先生が訓辞に似た印刷物を作り,それを配布する小学校もありました。
  お正月で,さらに登校日。しかも,天皇陛下の御真影や勅語です。「はれ」の日です。この日にに新しい服を着ていくのが習いだったので,ミチヨさんの家でも正月に新しいズボンに換えたのだと思います。
  
  民俗学的な面白さがこの本にはまぶされています。そこを見つけたので,私には貴重な本となりました。
  

Comments are closed.

Post Navigation