春は,新しい教育書が数多く書店に並びます。
まれに,私の所に新刊が届くことがあります。滅多にないことですので,ありがたく頂戴しています。
届いた本の封を開くと,中に「献本」と書かれた手紙類が入っています。
戴いたら,できるだけお返事を送るようにしていますが,「献本」とあると,ついつられて,「御献本,ありがとうございました」と書いてしまいます。
私の大好きな算数では,「何円ですか」と問われたら,「30円です」と,同じ語で答えるのが筋となっているからです。
しかし,人間関係のやりとりは,「同じ語」では無く,「対応した語」を使って応じることが習わしとなっています。ですので,文字をよく見て,状況を考える必要があります。
「献本」というのは,相手の方が,あえてへりくだって,献上という位置関係を作っている言葉ですから,受け取った私も,相手同様にへりくだり,つつしんで受け取った意を伝えなければなりません。
「御高書,拝受いたしました」というような書き出しになってきます。
同期程度の先生からいただいた場合は,これで充分OKなので,気を楽にしてお返事を書いています。
緊張するのは,大先輩から本が届いたときです。
しかも,その封の中に「謹呈」とあったら,ちょっとまいります。
大先輩が,謹んで贈呈いたしますと言っているのですから,「御謹呈,ありがとうございます」と書いたら,とんでもない無礼者となってしまいます。「大先輩が謹んで,私に本をくださり,ありがとうございます」という意味になり,大先輩を見下げてしまうからです。世が世なら,お手討ちものです。
『風土記』(岩波文庫)の中に「常陸国風土記」が収録されています。
ここに,天皇から詔(みことのり)を戴いた家臣が,「謹みて,~~承りぬ」と返事する様子が2回でてきます。思うに,当時の定型なのでしょう。
こういう古来の,自分をへりくだらせる言い回しの前例を知ると,返事も書きやすくなります。古典に習う訳ですから,しっかりとした気持ちで書くことができます。
「謹んで勉強させていただきます」と,真面目な面持ちで筆が運ばれます。
この本は,友達の中嶋郁雄先生からいただいた新刊『困った場面,ズバリ解決! うまい教師の対応術』(学陽書房)です。
中嶋先生にとって,学陽書房から9冊目となります。書き方も滑らかで,読みやすく,情報量も多い良い本です。
その中嶋先生と,昨夜,夕食会を開きました。
3時間ほど話したのですが,「確固たる立ち位置」の話しになり,中嶋先生は多いに燃えていました。この先,2年間ぐらいは,かなりハードに勉強をすることになります。多いに学んで,大前進して欲しいです。