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算数の授業/柳沢小学校の公開研究会

  城ヶ崎先生といっしょに,西東京市まで行ってきました。
  3年生の3教室で,算数「分数」の授業が行われていたので,私はそこを行ったり来たりして,見学させていただきました。「分数を制する子,算数を制す」というほど,分数は重要です。そのスタートの単元です。見ているだけで,勉強になります。
  私の頭を巡ったことは,分数の足し算(2/10+3/10)では,どうして分母を足さなくて良いのか,その論理がどうなっているのかでした。
  ・分数と小数は構造が違う。
  ・小数は十進位取りの仲間である。ここには,位の重層構造が成立している。
  ・分数は単位分数による位取りがない。ここには,重層構造が成立していない。
  ・分数は現象面から見ると,過去と現在の同時表現である。ここには、異種構造が成立している。
  ・分数は数の仕組み面から見ると,単位と量の同時表現である。ここからも,異種構造の成立が見える。(整数,小数は単位が略されている単一表現である)
  ・異種構造は,分離可が必須条件。
  ・書き物の数直線・テープ図などは,分離できない。これが弱点となっている。
  こんなことを考えていたので,面白かったです。
 
  分科会も算数に出ました。講師の先生のお話も勉強になりました。お話を拝聴しつつ,考えていたことは,数直線の3種類です。線分で表す一般的な「線分図」。デカルトの発明です。これが基本としてあります。これをどうわかりやすくするかという方向で3種類の数直線があるのだと,整理していました。
  線分による「数直線」が1種。これではちょいとわかりにくいので,幅を持たせた「テープ図」があります。これで2種。これでも今ひとつわかりにくい子には,「十進単位量」「分母単位量」を用いた「半具体図」があります。この3種です。
  この中の,「半具体図」という用語は,おおかたの先生は知らない言葉です。黒板や資料ではなかなかお目にかかることが無かったので,用語として成立しなかったのだと思っています。でも,算数ソフトの世界では多彩に登場してきます。ソフトで「半具体図」を見た先生方は,一様にわかりやすいと思ってくれます。ですので,「半具体図」は,ソフトから生まれた新しい算数の概念となります。
 
  道中は,城ヶ崎先生と歓談。城ヶ崎先生との話は,いつもながら,面白いです。今回は,「基本技と応用技」の話。「意図を問うことの重要性」など,かなり重要なところが話題となりました。
  算数ソフトの話題もでました。円の200分割を見た子が,8分割をもう一度!とお願いしてきたそうです。このお願いは,まさに,算数への関心です。なにか,はっきりさせたいことがあったのだと思います。ソフトを見ることで「疑問」「問題」が派生したのです。なぜ,このようなことが起こるのでしょうか。ソフトから得る算数情報の量が多いからです。こういうことをこの先も城ヶ崎先生たちと緩やかに研究を進めていきます。

合評会

  宇佐美先生にお電話をしました。合評会がいつ開催されるか伺いたかったからです。お話によれば,3月中に開催されるそうです。場所は,千葉大学の教育学部。決まり次第,教えていただけることになりましたので,3月は楽しみな月になりました。

  合評の本は『問題形式で考えさせる』(大田邦郎,東信堂)です。
  大田先生の本といえば,『読むだけ微積分』(学研)が私にはとてもためになりました。やっぱり,算数につながりの深い数学の入門書的な本は楽しいです。大田先生は数学の先生です。お会いしたときには,算数・数学のお話も少し伺えたらと思っています。

  『問題形式で考えさせる』には,大田先生の「学校と教育」という授業の授業記録が記されています。授業記録ですので,出題した問題がそのまま記されています。
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・ 現在の小学校の教科の名称である国語,社会,算数,理科のうち,もっとも早くから使われていた名称はどれか。
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  私の好きなジャンルです。興味がわきます。これは,たぶん理科と思います。本のどこかに答えが載っていましたが,忘れました。
  私が「理科」と思ったのは,単なる当て推量です。
  当て推量になってしまうのは,答えを導き出すとっかかりが無いからです。出題が知識を問う単純クイズになっているからです。
  こういう単純クイズであっても,興味があるので,頭の中が少し動きます。どうやったら調べられるか,その調べ方が頭をよぎります。辞書的に答えが出ているところを見つけるのではなく,具体的に確証が持てるような調べ方は無いかと,頭が巡ります。すぐに,昔の教科書の表紙を時代別に見てみたい!と欲求が出てきます。そうなったら席を立って図書館に走りたくなります。戦前の教科書の表紙を実際にこの目で見て,確認したいのです。
  調べ方が明確になると,それだけでも自分に納得できる一瞬となります。やっぱり,興味のあるところが出題されると,それは面白く,良い気分になります。興味は学習の重要な要素です。

  ところで,「教科名が変わる」こと,これ自体が興味深いことです。
  「読本」「習字」が「国語」に代わりました。「算術」が「算数」に変わりました。「地理」や「国史」が「社会」に変わりました。「窮理」などが「理科」に変わりました。
  気になります。名称に込められている意味が。

  「算数」は「数」を「算」するのです。あるいは,「数」で「算」するのです。これを知るだけでも,算数の柱が見えてきます。
  「国語」は「国」の「ことば」です。国が良いと認めることばです。下世話な言葉ではなく,良い言葉を学ぶのが国語の時間と理解できてきます。古典の登場は実に良いことです。
  「理科」は「理」するのです。法則性や規則性を見いだすのです。1つを見て判断するような学習ではなく,複数を見ることが基本と見えてきます。
  「社会」は「社」で「会」うのです。しきたりを学ぶことが根底にあるのだととらえられます。

  こんな感じで,あれこれ思いめぐらせてくれる良い本です。合評会が楽しみです。それまでの間に,再度読み返して,頭を巡らしておきたいと思います。ありがたい機会です。

 
  

算数ソフトを使った話/佐々木先生から


  先日,佐々木先生とお昼を一緒に食べました。神保町の「さぼうる」という喫茶店です。
  食事話の一つに,佐々木先生が円周率を考える場面でソフトを使ったことを話してくれました。
  この話が,実にグッドでした。

  円を1回転させたら,何cm進むかを子どもたちに予想させたそうです。
  そうしたら,3つ4つの円を転がしたあたりになると,子どもたちが,「先生,3倍とちょっとでしょ」と声が上がってきたそうです。
  これは,すごいことです。規則性を見いだしているのです。「直径」と「1回転距離」との関係が,どうも「3倍とちょっとだ!」と把握できたのです。こういう発見が円を転がす様子を見せることで,つかめるのですから,実にすばらしいです。

  円は,右上の水色ボタンで4cm~10cmまで自由に選べます。転がし方は,「自動的に転がす」「ドラッグして転がす」の2つから選べます。
    直径4cmの円を転がすと,12cmと半端。
    直径5cmの円を転がすと,15cmと半端。
    直径6cmの円を転がすと,18cmと半端。
    直径7cmの円を転がすと,21cmと半端。
  こうやって順に見ていけば,どうも3倍とちょっとかなと子どもたちが感じたのです。さすがです!

  佐々木先生の話の重要なポイントは,「順に見せる」という方法です。順番に見せたから,気がつきやすかったのだと思います。大事な「指導法」です。
  佐々木先生のおかげで,順に回転させていけば,どのクラスでも子どもたちの中から規則性・関係性を見いだす子が出てくるのです。うれしい方法を教えてもらいました。感謝です!

  算数の思考で重要なことの一つが,「規則性の発見」です。「関係性の発見」といっても差し支えありません。AとBの間にどんな関係があるか,そういう思考が働く子を育てるのも,算数の授業の大切な点です。問題を見て,「『直径』と『回転距離』に関係がありそうだ!」と察する子が出てきたら,頭が算数モードになっています。ほめてあげるべき思考です。

  算数ソフトのどのソフトでどういう規則性・関係性を子どもたちが見いだしたか,こんなところも,新しい算数の会で少しずつ出し合っていきたいと思っています。新しい指導法を模索できるのですから,とてもうれしいです。週末には,新しい会を発足したいと思っています。
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  上のソフトは,『子どもが夢中で手を挙げる算数の授業』(さくら社)の5年1巻に収録されています。単元「円周」の中の「01B,直径と円周/円を転がす」です。

神山先生からはがき

  神山先生は,中学の数学の先生です。神山先生からのはがきに,「数学好き」が増やせるよう頑張る,という趣旨のことが書かれていました。
  今度会ったときには,神山先生の取り組みを聞いてみたいと思います。わたしも,算数好きの子が増えてほしいと願ってプログラムを組んでいます。お話を伺えば,得るところが多いと思います。

  算数好きを増やすために,「次元解析」という手法を取り入れているのは,福嶋先生です。「式の右と左の単位の次元が等しくなる」という性質を利用して,どのように式を立てたらよいかと迫っていく方法です。この方法は,算数の特色である抽象的思考を必要とする思考法なので,意図的に教えていくことで,優れた算数力が高まると,私も思っています。

  工藤先生は,算数ソフトを使った授業の研究を進めて始めています。
  渥美先生も,授業を校内で算数ソフトを使った授業を提案するために,研究を始めています。
  中嶋先生は,算数を核に据え置いて研究を進めています。
  
  算数・数学好きの子が増えてほしいと願う先生方,算数ソフトを使った新しい工夫を試みる先生方から,活力ある内容のメールを今年に入ってからも,複数いただいています。
  そろそろ力を合わせて,あれこれ模索していく時期に入ったのかなと感じています。現状ではやっぱりメーリングリストということになるのでしょうか。ちょっと考えて,しばらく後に,交流できる場を作りたいと思います。    

5年算数ソフト/四角柱をアップしました

  5年で学習する立体図形。その中の代表格である「四角柱」のソフトを,「もっと!算数」にアップしました。
      http://www.mott3su.jp/

  頂点をドラッグすると,「四角柱」を保ったまま,形が変わるように仕込んでいます。
  とくに,向かって左端の頂点(上も下も)には,高さを変える機能を植え付けています。
  ですので,なかなか良い感じで形が変わります。どんな感じで動くかは,「もっと!算数」サイトでダウンロードすれば,実際に操作できます。

  小学校の先生方の授業のお役に立てばと,願っています。

  
  

TBSラジオ ミミガク

日曜日に放送されました。
http://www.tbs.co.jp/radio/mimigaku/heya/20110213.html
写真も出ています。

『明治人の作法』もお読みいただけると,うれしいです。