Monthly Archives: 2月 2011

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『数学用語と記号のものがたり』

  算数にも記号や用語が出てくるので,その筋の本は少しだけ持っていました。この本のことは知らなかったのですが,別の本を読んでいたら紹介されていて,読んでみたくなりました。

  算数好きの方より,数学好きの方にグッドな本です。
  でも,「算数小話」なんて本を書きたいと思っている先生は,確実に必読です。
  この本の後書きにも書いてありますが,戦後,数学の用語を初めて形にしたのが片野善一郎先生です。数学用語・記号の第一人者です。

   この本には,歴史的な数学書が多数紹介されています。今でも探せば出てきそうな本もあります。何とか入手できそうかなと思うと,心が少し動きます。手に入れたい本のリストを作りました。その中の1冊が見つかったので,さっそく古本屋に注文しました。そうして,いつか,今見つけられない本を見つけて,読んでみたいと思います。

  響いたところを1つ書きましょう。
  負の数を中学1年で学びますよね。13歳です。でも,この負の数が数学者の間で完全に理解されるようになったのは,デカルトが数を線分に置き換えられてからですと,書かれています。

  17世紀の数学者がやっとわかったことが,20世紀には13歳の子がささっと理解しています。これは,驚異的な脳の進化です。

  脳のどこが刺激され,脳がどう変化するかなど,大脳生理学などの研究が進んでいます。ありがたいことです。
  そういう研究が全くされていなかったときに,デカルトが数を線分で表す発明をしました。それを見ることで,数学者の脳が理解を始め,座標の概念も把握され,虚数の概念も生まれ,学者から一般学生まで理解できるところまで脳が進化したのです。負の数程度は,13歳の子が理解をしていきます。
  つまり,人間の脳は,この年齢ならこのぐらいまでだね,などと上限をもうけたり,平均値で考えたりする必要は全くないのです。わかりやすい見せ方が発明発見創出されれば,それで人間の方が理解を進めていこうとし,時を経て脳が進化するのです。
  脳の進化を進めることは,医学の大先生でなくても出来ることなのです。デカルトすればいいのです! 

  算数・数学は「動きを見せること」。これが,算数・数学の理解を容易にすることになり,時とともに,人々の脳が発達するのだと私は考えています。算数のソフト開発で私もデカルトしています。

デシメートルが使われていた

  小学校で習う単位として,km,m,cm,mmがあることは,誰しも知っていることです。
  私が小学校6年の時,担任の先生が,デシメートルやデカメートルなどもあったことを話してくれました。

  さっき読んでいた昔の算術書『尋常小学 新算術書解説』(昭和2年)に,このデシメートルが出ていました。「dm」と書きます。
  
  「スラスラと出来るまで」
  「実測によって確実に」
  「簿上に発表」
  「口頭ででも発表」

  指導の仕方は,今とさほど変わっていません。今の算数の指導では,「必要感」が重視されています。上の「実測」には,必要感が込めやすいです。
  「簿上」の「簿」は帳面のことです。帳面というのはノートのことです。「簿上に発表」というのは,今で言うノートに書くことです。書くこと自体が発表なのです。何しろ,ノートは貴重品です。単なる練習は石盤に書き,布で拭いて消し,また書き・・・と勉強していた時代です。「ノートに発表」の時は,ささやかながらも緊張感があったことでしょう。

  ところで,このデシメートルですが,10cmが1dmなので,かなり把握しやすい単位といえます。30cm定規は「3デシ定規」となります。身長が140cmの子なら,「身長14デシ」となります。どことなくおもしろいです。
  この頃は,メートル法を使い始めた頃で,まだまだ生活の中は「尺」「寸」でした。1尺が30cmちょっと,1寸が3cmちょっとですから,日頃使っている尺寸の単位を1/3したぐらいがちょうどデシメートル,センチメートルとなっていました。デシメートルは,メートル法へ移行するのにとても大切なクッション剤だったのではないでしょうか。

習字の姿勢

  習字の姿勢です。
  この画像も,戦前の教師用指導書に載っている画像です。

  小学校の1年生の教室には,立ったときの姿勢と,座ったときの姿勢が掲げられています。これと同様に,戦前は習字の姿勢も教室に掲げられていました。また,学校によっては「習字室」があり,そこには掲げるよう指導が入っていました。

  そうして,習字の指導で先ずやるべきこととして,「先づ姿勢を整へて心を落着け」とあります。「静の教育」です。

  私が小学生の頃は,机とお腹の間に「ゲンコツが一つはいるように」と先生がお話くださっていました。足の裏は床につけることも教えられていました。背中には,背中と服の間に定規が入っているつもりで・・・とお話を受けたことも多々ありました。
  落ち着いていると,こういった子細の指導も浸透しやすくなります。

  さて,戦前は姿勢をどのようにしましょうと,指導していたのでしょうか。
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  両脚を稍(やや)開いて
    脚を平に床に着け,
       足先に心持力を入れるようにする。
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  腰はあまり深くかけない
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  上体は腰の上にしっかりと落ち着けて真直ぐにし,
  書く場合は
     体の重みを稍前方に掛ける
  この時下腹に心持力を入れ,
     左手の拇指(親指)は机の前縁
        他の四指は机の上で紙を押さえる
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  読んだだけでも,勉強になります。
  具体的な姿勢の指導が無いままに書かせると,子供たちは勝手気ままな雰囲気を出してきます。
  左手はこうですよ。足先に少し力を入れますよ。と,何をどうしていたらいいのかが毎度毎度話してあげることが大切です。駅や車内で,「構内は全面禁煙です」と毎度毎度放送してくれています。おかげで,次第にマナーを守る雰囲気が生まれ,身勝手が減っていきます。
  
  姿勢のあり方は,もう少し続きます。
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  腹部は机から少し離し,
    眼は紙面から約30糎(センチ)に保つ
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  私ももう少し姿勢をよくしたいと思います。

習字の硯の部位名

 習字で墨を磨っている写真です。今の小学校では見ることのできない光景です。

 この写真は戦前の教師用指導書に載っていた写真です。 
 指導書ですから,微に入り細に入り,「こうするのがいいんですよ」と示されています。ありがたい書です。
 たとえば,墨は立てて磨るようにと示されていますが,買ったばかりの長い墨の場合は斜めにしても差し支えないと記されています。
 「基本を示し,時として例外も認める」という考え方です。
 「本来なら,こうあるべきだが,まあまあやむを得ませんな」と,許容のようであり,あきらめのようでもある,とても寛大な姿勢です。小学校の先生方は,何かあると,たいていこのように考えます。大きく道を外すことの無いよい考え方です。

 磨る時の動きも示されています。基本は楕円を描くように磨ります。せかせかと前後に動かすのは,ダメとされています。これは,おわかりですよね。心を落ち着ける時間だからです。落ち着いて磨ることが基本なのです。

 墨の持ち方も示されています。人差し指と中指が向こう側。こちら側に親指。こうなるように上から持ちます。
 でも,今はこの墨をする指導は無くなりました。墨汁を使う習字になったからです。

 硯の手前が「陸(おか)」,先の墨だまりを「海(うみ)」と呼びます。
 硯を運ぶ時には,「海」を向こうにし,少し下げるようにして,陸の両端を上からガパッとしっかりつかんで,運びます。
 これも今はスポイトで先に吸ってしまうので必要の無い指導になっています。

 文化が発達していくと,自然と指導も変わってきます。でも,習字で教える「心の落ち着き」は見失うわけにはいきません。
 「不易流行」ですね。 

5年の算数ソフト_倍数と約数

 算数や数学は数や式で押していくと,どうしてもわかりにくくなります。わかりにくさは,つまらなさにつながり,次第に算数嫌いへの道を歩むことになります。

 でも,算数ソフトが伴うと,これが180度逆向きになります。算数が好きになっていくのです。

 今日は,ちょっと「製品版」からお話ししましょう。
 製品版というのは,『子供が夢中で手を挙げる算数の授業』(さくら社)です。算数ソフトが,単元毎にそろえられて入っているDVDブックです。そろっているのでとても便利です。中身もすごいです。

 今回のお話で使うのは,5年の2巻です。「倍数と約数(16本)」「割合と円グラフ・帯グラフ(23本)」の2単元のソフトが収録されています。

 2巻の中の「倍数と約数」に「01B,倍数/2~12の倍数」というソフトがあります。左に貼り付いている画像が01Bソフトの画面です。
 左端の黒いところをクリックすると,倍数のところに色がつきます。これを3つ見せると,何とはなく規則性が感じ取れてくるのです。
 この規則性が何で感じ取れるのかというと,2の倍数,3の倍数,4の倍数を整頓して並べているからです。バラバラに見せたら,斜めに見えてくる規則性には気づきようがありません。並んでいるから,見えてくるのです。
 
 4の倍数まで見た段階で5の倍数を考えてみると,2つの考え方が見いだされてきます。
 1つは,5をかけ算して見いだす方法です。普通の算数の授業ではこの方法を学びます。
 もう一つは,5を使わずに,2・3・4からの規則性から5の倍数に迫ろうとする方法です。見つけた斜めの規則性で,先の世界を見てやろうとしているのです。こういう頭の働きを子供たちがしてきたら,うれしいものがあります。論理的に考えていく力強さのようなものを感じてきます。
 
 そうして,12の倍数まで全部クリックして見せていくと,斜めの規則性がどうも計算の式のように表せることに気がついてきます。
 「先生,2の段の上に1の段があるんだよね」と言う子がいたら,すごいです。
 1の段をペンで補って書いていくと・・・

   1から始まる斜めは,全部+1になっている。
   2から始まる斜めは,全部+2になっている。
   3から始まる斜めは,全部+3になっている。

 ということは,1万から始まる斜めは全部+1万になっているということになります。
  「全部,+α」となっているという考え方は,等差数列の考え方です。そこに,子供たちが何とはなく触れてしまいます。

 通常の倍数も当然バッチリできて,さらに,等差数列をちょいとのぞかせてやれます。
 算数ソフトはやっぱりグッドです。教室の薄型テレビ(デジタルテレビ)にドーンと映し出しましょう!
 

2年の九九ソフト

  「九九の積み重ね図」ソフトが,ようやく完成しました。
  
  ソフトの上部に見える橙色のボタン。これは,九九の数を出すボタンです。クリックすると,青文字の数が出てブロックが並びます。
  「かけられる数」の数ボタンをクリックすると,横一線にブロックが並びます。
  「かける数」の数ボタンをクリックすると,縦に積み重なります。
  「かける数」を1から順に押すと,1段ずつ増える様子がわかりやすくなります。
  クリックしつつ,積み重なる様子がわかるので,このソフトを「九九の積み重ね図」と呼んでいます。

  でも,先に「かける数」を決めて,後から「かけられる数」をクリックすると,今度は,横に並ぶ図になります。長方形の面積の求め方に近い見せ方ができということです。

  九九は,どうしても暗唱一筋になりがちです。九九がしっかり確実にできれば,その先の計算もかなり安心できます。ですので,暗唱はとても大事です。
  でも,暗唱一筋というのは,あまりにももったいないことです。

  このソフトを「もっと!算数」サイトでダウンロードして,ちょっとした時間に子供たちに見せてあげてください。量感も伴いますし,「かけ算は長方形と仲がよさそう」と感じ取れれば,かなりグッドです。

  こういう算数の世界にどんどん入っていけるが九九なのですが,子供たちには,現実の世界と結びつける学習も大切となります。そこで,ちょっと気張って,作り込みました。
  [?]を設置しました。
  [?]をリックすると,ブロックの中に絵が出るようにしました。ヒヨコも出てくれば,カニも出てきます。飛行機も出てきます。
  ヒヨコ・カニ・飛行機などは,それぞれ大きさや属性が全く違います。でも,そういう個々の特性を全部無視するのが算数です。そうして,単に「数」として考え進めていきます。
  この算数の考え方を子供たちの頭の中に浸透させる方法として,昔から効果があるとされているのが,「ブロックの中に絵を入れる」方法です。
  昔から伝わる優れた指導法を,このソフトに入れました。
  
  一つ作り終わると,とてもいい気分です。
  なんだか,やったな,という気分になります。
  「もっと!算数」にアップしますので,どうぞ,ご活用ください。