小学館で,1年に1回開催されている「小学野口塾」も今回で5回目となりました。
いろいろな提案があり,その中に未来を感じるもの,新しい視点のものがあり,参観して良かったと思いました。
私も算数ソフトのお話をさせていただきました。
最近は,どの会場に行っても,「算数ソフト持っています」「使っています」という嬉しい声が聞こえてきます。
ソフトを利用している先生がどんどん増えているのです。その先生方に,これまで通りの「算数ソフトの紹介」をしていては,物足りなさが出てきます。
そこで,この夏から,算数ソフトを使いつつ,「算数の話」をするようにしました。
今回の小学野口塾でも,基本中の基本の考え方をお話ししました。
これがなかなかの好評で,隣の席に座っていた群馬の算数の先生から「本質に迫る指導」と絶賛されました。
懇親会では,関田先生から「12月の講座でぜひ!」と誘われました。ありがたいことです。
夜も更けた3次会で飯村先生と話しました。飯村先生が「今」を話してくれたので,私から「看板」の話をしました。飯村先生は何かつかんだようでした。
4年生の概数。
要するに,「どっちに近いか?」ということを,「四捨五入」の概念で判断できるようにする,そういう学習です。
この勉強は,パッと見,とても簡単そうに感じます。ちょっと教えれば,直ぐにわかるような気がします。
でも,現実はなかなか厳しく,わからない子はわからないのです。
このソフトを開発する前から,「どっちに近いか?」を感覚的にとらえられるソフトを作りたいと思っていました。ただ,その表現をどうするかが難しく,どう表現したら子供達にわかりやすいかで,結構頭を使いました。
そうして,作り上げたのが,このソフトです。
「答え」ボタンをクリックすると,何かが動き出します。さて,何がどう動くのでしょうか。
このソフトを持っている先生は,上のような問いを子供達に出すことができます。
上の形より,もっと粗っぽく「「答え」ボタンをクリックすると,どうなるでしょう」でもかまいません。
どちらにしろ,子供達は学習ゾーンで答えてくれます。「当て推量」の答えになるのですが,その当て推量も「ソフトは何かを教えようとしている」という理解があるので,学習から外れた方向に向かうことはありません。
そうして,実際に「答え」ボタンをクリックすると,赤文字の「64」が動き出します。「60」に吸収されるように動きます。
これを,何回か見ている(最低3回です)と,「近い方に動く」というきまりが見えてきます。
このきまりが見えてきたら,第一段階突破です。
算数は,「きまり」で成り立っている勉強なのですが,そのきまりは「数」や「計算」などにまつわるきまりです。
ですから,「近い方に動く」という日常語でのきまりが出てきたら,「数を使ってきまりを考える」方向に導きます。すると,「四捨五入」の概念に近づく事ができます。
算数ソフトが手元にある先生は,こうした「きまり」に直行する指導ができます。
※ 上の算数ソフトは,『子どもが夢中で手を挙げる算数の授業』(4年5巻)に収録されています。
有田和正先生のご自宅へおじゃましました。
『学級づくりの教科書』ができあがってきたので,お届けに参上いたしました。
仕事柄,いち早く拝読いたしましたが,はじめにの冒頭からしてグッと来ます。愛知の行田先生からのお願いに始まり,この本ができたいきさつが書いてあります。
先生方に求められてご執筆くださったのが,この本なのです。何とも,ありがたいことです。
応接間に通されて,まず驚きました。テーブルの上にノートPCが開いています。有田先生は,私たちが到着するまで,インターネットで調べ物をされていたのです。
それを知ったとき,私もまだまだチャレンジをし続けなければ!と痛感しました。非常に強い決意を心に起こせました。有田先生のおかげです。
この本の発売は,19日です。
ぜひ,お読みください。
静岡市に続いて,信州の松本地方の方言が載っていました。
小学生に関する方言もあるので,それを書きましょう。
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こども ボヾサ
乱暴する子供 ガツタ
悪き子供 タンコ
綺麗の子 ウツイ子
子供仲間にてはお前と云う事 ワレシヤヱ
木へ登る ハチヤガル
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子供の頃,けんかした相手に「オタンコナス」と言ったことがありますが,これと「タンコ」は通じている様に思えます。
「ウツイ子」というのは,美しい子という言葉なのでしょうか。「ウツケ」ではなさそうです。
面白いなと思うことは,良い子の方言より,悪い子の方言の方が多いことです。悪さに対しては,発作的に言葉が出るから,語彙も自然と少し多くなるのだろうと思います。
明治20年の頃の信州,松本地方の方言。今はもう誰も使っていないと思います。
方言が東京風に染まっていった背景には,人の交流があります。鉄道網に代表される交通機関の発達が大きな影響を与えています。
それとは別に,明治政府が「標準語」の使用を求めたことも大きな原動力になっています。とくに,新聞や教科書が標準語一色になり,学校からも標準語が広がっていきました。
そうして,ラジオの発達。テレビの広がりです。
時代はすすみ,今では方言を大切にする風潮になっています。一度滅びた言葉が元に戻ることはありませんが,おらが国の言葉を大切にする流れは,とても良い方向となります。世界の中で日本の風を大切にする流れにもつながるからです。
明治22年に発行された雑誌を開いたら,なかなか面白い記事が載っていました。
静岡市の方言です。
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ゴセツポイ 清潔(さつぱり)となる事
ツギニユク 裁縫に行く
ヒドロシイ 太陽などに向ひ眩敷(まぼしき)事
ゾンザイル 戯むるヽ事
イカズニ 行くといふ事
カコクサイ 布紙などの火中に入りたる臭気
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徳川幕府が倒れ,明治政府の時代になったとき,たくさんの徳川士族が静岡市に移住しました。そこに,鉄道が敷かれ,東西の人の交流が頻繁になりました。そうして,静岡市の方言は,次第に東京風に傾いていったことが記されていました。その一端が画像の方言です。
携帯端末などを使っている人なら,維新以降に,「言葉のシンクロ」とか,「言葉の同期」が始まったと言った方が伝わりが良いかもしれません。
しかし,その伝わり方は,「A∪B」と,両方が生きる形にはなりません。
また,「(A+B)÷2」と,平均化されるわけでもありません。
「東京風」という言葉が示すように,力の大きい方が磁石であり,小さい方が砂鉄のような感じでシンクロされていきます。
静岡市の方言で,おもしろいなぁと思ったのは,次の2つです。
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マゴジイ 祖父
マゴバア 祖母
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マゴから見てジイ,バアということなんでしょうか。納得させられる言葉です。
しかしながら,これらの方言も,もうほとんど使われていないのではないでしょうか。静岡市近郊の方とお会いしたら,ちょっと聞いてみたいと思っています。
交流により言葉が変わり,言葉が失われていくのは,致し方ないことなのかもしれません。だからといって,グローバル時代の今,日本語が英語風になり,日本語が無くなっていくとしたら,それは日本文化が姿を変えてしまうことにつながります。
「A∪B」の形で,日本語も英語もともに言語として栄え発展しつつ,シンクロが進むことが大切です。
---静岡県の柴田克美先生から,facebookでお話をいただきました。----
柴田 克美 ブログを拝見しました。
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ゴセツポイ 清潔(さつぱり)となる事
今でも使いますよ。あのうるさいのがいなくなるとごぜっぽいだよ。(笑)なんて、使います。 ツギニユク 裁縫に行く これはあまり使わないかな。
ヒドロシイ 太陽などに向ひ眩敷(まぼしき)事 これも今でも使います。ヒズラシイともいいます。
ゾンザイル 戯むるヽ事 これはあまり使いません。
イカズニ 行くといふ事 使います。早くイカズニ。と言いますね。否定形だと思いますよね。
カコクサイ 布紙などの火中に入りたる臭気 そのほか、ガライカとか、オマッチも使います。
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徳川家康ゆかりの遺跡がたくさんありますので、ぜひ、静岡においで下さい。銀座というのも静岡が本拠地でそれが東京の銀座になったそうです。
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マゴジイ 祖父
マゴバア 祖母
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これはなるほどですね。 とても面白かったです。ありがとうございました。
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柴田先生,たくさんのご教授,ありがとうございました!
「算数」は,どういう教科でしょう。
こういう根本的なところがバシッと把握できていると,授業の腹の据え方がしっかりしてきます。
一言で言うと,算数は「きまり」で成り立っている教科です。
「きまり」と言っても,主に「数」「計算」という非常に抽象的な世界でのきまりです。
この「きまり」を理解し,使えるようにし,さらに高いレベルの「きまり」へと頭で理解できるように進んでいくのが,算数なのです。
また,算数の単元は大筋4つの段階を経て進んでいきます。
1) 理解
2) 定着
3) 応用
4) 実用
まず,算数の「きまり」を理解します。
次に,その理解したことが定着するように学習します。
それから,きまりを利用して,ちょっと複雑な問題をも解けるようにします。
そうして,できれば,生活でも使えるようにしていきます。
「きまり」の勉強を「理解」するとき,もっとも重要になることは,何でしょう。
その答えは,「きまり」を見いだすことです。
もう少し,強く言えば,「きまり」を見いだせる能力を育てることです。
筑波大付属小で教鞭を執られていた坪田耕三先生も,正木孝昌先生も,「きまり」に注目をしています。きまりを見つける能力をどうやって伸ばしていくのかについて,素晴らしい実践をされてきています。
「数的きまり」や「計算的きまり」,また,「数値化できる規則性」を見いだせるように指導をすることが,子供達の算数の理解力を高めることになります。
そのときに顔を出すのが,「最低3回の論理」と「関係性の視覚化」です。まさに,デカルトの論理です。
私の作っている算数ソフトは,繰り返しが容易なため,この「最低3回」の論理に強いのです。また,具体と数,数と式,数とグラフなど,関連性を持った相異なる2つを同時に見せているの,両者の関係がつかみやすいのです。これにより,きまりの理解が容易になっているのです。
少し歴史的に言うと,デカルトが400年前に見いだした論理を,算数の世界で誰にでも適用できるようにしたのが,算数ソフトなのです。