Monthly Archives: 8月 2014

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明治16年の『小学作法書』,いいですね。

b8307明治16年の文部省編纂の教科書『小学作法書 巻之一』です。
この当時は,まだ国定教科書ではなかったので,御上に申し出てOKが出れば,教科書として使えました。
その中に,作法の教科書もあり,修身の中の一つとして勉強しましょうとなっています。

「巻之一」ですから,1年生が使う作法の教科書です。
でも,一年生の子に,この教科書を読ませていたとは,とても思えません。
いきなり漢字漢字の連続で,しかも,変体仮名文字もでてきます。
今の大人も,読みでちょっとつっかえると思います。
1年生には無理ですね。

この教科書,先生が持って,ここに書いてあることを読み上げたり,塗板(今の黒板)に書いてたりして,教えていました。

それにしても,書き出しは実に良いですね。
「人の子たるものは」
ですよ。
ちょっと付け加えるなら,
「そもそも,人の子たるものは」
となります。

大元・根っこから語り始めています。
大上段から,エイッ!とばかりに,振り下ろすスタイルでもありますね。
このスタイルは,「要するに,こういうことがスタンダードですよ!」と教える指導にはぴったりです。

朝起きたとき,夜寝るとき。
必ず父母のご機嫌をうかがいましょう,と示しています。
これ,良いですね。
今の時代は,「おはようございます」「おやすみなさい」と挨拶をします。
でも,明治初期の頃は,父母に「ご機嫌いかがですか」などと,もう一言加えていたことがわかります。
父母が安心の気持ちでいるかどうかをお伺いする事が,朝晩における子どもの本分だったのです。

それが,次第に,挨拶すらしない子が増えています。
この「機嫌を伺う」という感覚がわかる子は,もういないかもしれませんね。
父母を一番大切にするという教え。
親孝行の教えです。
しっかり子らに伝わってほしいですね。

2番目も良いですね。
どこへ行くにも,必ず,父母に行き先を言ってから,出かけるのですよ,と教えています。
これ,「事前学習法」に通じます。
予め,告げておけば,心配がぐっと少なくなります。
「父母に心配をかけない」「両親を安心させる」
これは,他の人ではできません。
子どもだけができる心配りです。
これがわかる子は,自分がしっかりする方向に育っていきますね。

明治16年の作法書,滑り出しは,「親孝行」がテーマです。
すばらしいです。

3年生の小数のソフト

b83083年生の小数のソフトです。

10のカード。
1のカード。
0.1のカード。
それぞれが,位のコーナーに入っています。
それを見て,いったいどんな小数になるのか,答えていくソフトです。

これを実際にカードを使って授業をしたら,大変だと思います。
大変な上に,授業のテンポがもたもたします。
右の47.8を出題するには,4+7+8で,合計19枚のカードを黒板に貼り付けることになります。
結構な時間がかかってしまいます。
何問も出すのは,なかなか大変ですね。

それがクラウドをポンと立ち上げると,この問題がクリック一つで出題できます。
パッと問題が変わるので,子ども達も真剣に見て,さっと答えようとします。
このスピード感。意欲を高めます。

数回問題を出すと,素早く答えられるようになってきます。
そうなったら,「10問連続,気合いで答えよう!」などと出題することもできます。
ちょっとしたスピードアップは,子ども達も大好きです。
チャレンジ精神に火がつく感じになります。

もう大丈夫となったら,次につなげる出題をしてみるといいです。
クリックして,問題が出たら,すぐには答えず,次のように言わせます。
「10が4こと,1が7こと,0.1が8だから,47.8です!」
示されている仕組みを言葉にして言わせる学習です。
すると,そういう文章で示された問題への抵抗もぐっと少なくなります。
言い回しになれることもありますし,意味を言葉としても理解できる力がつくからです。

青・黄・赤の「?」ボタンがあります。
これは実に重要です。
「赤?」をクリックすると,0.1が1つずつ増えていきます。
0.1が9になったとき,「さて,もう1回,赤?をクリックすると,どうなるでしょう???」と聞いてみましょう。

クリックすると,1が1つ増えて,0.1が全部無くなります。
繰り上がるのです。
この繰り上がっていく様子も,算数としては重要なポイントです。
位取りで表されている数の持っている,実に面白い仕組みなのです。
何度か見ることで,数の概念がまたひとつしっかりしてきます。
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先ほど書いた,「仕組みを言葉にする学習」は,意外と重要なところです。
ソフトを使うと,この方面の指導も繰り返しできるので,効果的に行えます。
かけ算九九の「仕組み言葉学習」について,
7月に開催された「事前学習法説明会in千葉」で上澤先生と藪田先生にお話ししました。
両先生,感動していました。

西村茂樹氏の『日本教育論』

昨日,記した西村茂樹氏。
道徳を専門としている先生方の中で,歴史的にも学んでいる先生は,一度はチェックをされたことがあるのではないでしょうか。
文部省編纂局長として『小学修身書』を著した方です。
近代道徳の祖とも,小学校道徳の祖ともとらえられる,重鎮です。

その西村茂樹氏は,明治23年に『日本教育論』を講演しました。
それが,本として伝えられています。
この『日本教育論』の中に,論語の一節が2カ所出てきます。
その一つが,孔子の教育思想を現した部分です。

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子曰く,
憤(ふん)せずんば,啓(けい)せず。
悱(ひ)せずんば,発せず。
一隅(いちぐう)を挙げて,三隅をもって返らざれば,
則(すなわち)ち復(また)せざる也。
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学びたい心が膨らんで来たら,ひらき導きましょう。
蓄積されて言いたくてしょうがなくなったら,ひらき導きましょう。
一つの隅(すみ)を持ち上げれば,たくさんの隅(すみ)が持ち上がりますよ。
でも,そうならなかったら,まだ1つの隅が熟されていないのですよ。

とまあ,こんな意味です。

この教えは,算数ソフトを使って授業をしているときの様子とよく似ています。
ひとたび,算数ソフトを使って授業をすると,子ども達は,また明日も算数ソフトを使って勉強をしたいと望んできます。
これが,「憤している姿」です。
こういう状態になったら,先生が教えたい方向へ導くことができます。
また,ソフトを繰り返し見ている内に,十分な蓄積がなされ,何かしら気づいたことを言いたくなってきます。
これが,「悱している姿」です。
こういう状態になったら,発言をさせ,教科書を見せ,導くことができます。
ソフトが滲透し始めた頃,よく,城ヶ崎先生がこういう様子を語ってくれていました。
ソフトを使うと,勉強したがる。
同じソフトを何回か繰り返すと,何か言いたくなってくる。
そんなとき,良い感じで指導が入れられるということです。

算数は「一を聞いて十(たくさん)を知る」勉強です。
1つの「きまり(原理)」をしっかり理解すれば,それを使って,たくさんの問題を解くことができるようになります。
これが,「一隅を挙げて,三隅(たくさん)をもって返る」です。
でも,三隅(類似問題)に取り組ませても,それがよくわからない場合は,もとの一隅(きまり)がしっかり習得し切れていないのですよと,孔子は教えてくれています。

明治16年に『改正教授術』が世に出て,大ヒットしています。
この本に出ている新しい指導法は,それまでの暗記中心の指導法とは異なり,子ども達のやる気を起こす方法でした。
子ども達の能力の開発するので,西村茂樹氏は「開発法」と述べています。
これが,孔子の教育思想と同じなのだと述べています。
西洋・東洋,互いの良いところを教育に取り入れましょうと,非常に先進的な考えが記されているのが『日本教育論』です。

「憤している姿」になる指導。
「悱している姿」になる指導。
目指していきたい姿ですね。

「事前学習法説明会in千葉」を山崎先生と。

「事前学習法説明会in千葉」を開催しました。
東京の山崎先生にお話ししました。
説明を聞いてすぐに,山崎先生は合点していました。
事前学習法の良さにも納得してくれ,さらに,日本的な方法であることに感動していました。

b8311家に帰り,西村茂樹氏の『小学修身訓』をちょっと読みました。
下巻の冒頭は,中庸(ちゅうよう)からの一節で始まっています。
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およそ事(こと)は予めすれば則(すなわ)ち立ち,
予めせざれば則ち廃(はい)す。
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これは,事前学習法そのものを言い表しています。
けだし,名言です。

手元の『小学修身訓』は明治12年に出ています。
また,16年には,文部省編纂局から『小学修身書』として発行されています。
ですので,明治時代の子ども達は,こういうことをしっかり習っていたのです。
日本人が事前に事をしっかりと進める姿勢を持っているのは,こういう教育の成果とも言えます。

この日本的な,実に当たり前の方法を,国語と算数に意図的に取り入れて,授業を進めていこうというが,「事前学習法」です。
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さて,山崎先生です。
現場での指導法についての疑問を持っていました。これが,ひとつ良いなと思ったところです。
さらに良いなと思ったのは,「今の教育は過渡期にある」という認識も持ち合わせていたことです。
これがあると無いとでは雲泥の差となります。
また,会ったときには,さらにあれこれ話ができそうです。
良い若者です。

※中庸の続きがあります。
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およそ事(こと)は予めすれば則(すなわ)ち立ち,
予めせざれば即ち廃(はい)す。
言(げん)前に定まれば則ちつまずかず。
事(こと)前に定まれば則ちくるしまず。
行い前に定まれば則ちやまず。
道前に定まれば則ち窮(きゅう)せず。
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6年の「対称の図形」のソフト

b8313だいぶ前に,作った「線対称」のソフトです。
クラウドにアップする予定だったのですが,大事なところが抜けていることに気づき,アップを止めていました。

何が抜けていたかというと,対称の軸の点P,点Q,点Rの,PQRの字を付け損ねていたのです。
なぜ大事なのかは,すぐにおわかりいただけると思います。
この文字がないと,説明がとってもやりにくくなるからです。

このPQRの文字をソフトに取り付けるのですが,ただのイラストなら,そこにポンと文字をセットすれば終わりとなります。
算数ソフトの場合は,赤い線を先生方がマウスで動かすので,その動きに対応して,PQRの位置も変化しなければなりません。
これが,なかなかやっかいなのです。

なにしろ,マウスをどう動かすは,予測ができません。
予測できない動きを前提に,プログラムを作ります。
そんなことは不可能と感じられますが,これも先人の知恵で,秩然(ちゃん)とできるようになります。
マウスで図形を動かされたら,その動いた位置情報を素早くキャッチし,それをちょっと処理してから,PQRに伝えればいいのです。
頭の使い方が実に面白くなるのがプログラムです。

ところで,さっき,PQRの文字がないと,説明ややりにくくなると書きました。
この「やりにくい」という状態を感じたら,それを子ども達にも体験させてみるのも良い学習になります。
たとえば,図はあるんだけど,UとWとYがもし書いてなかったら,どうやって説明する?
なんて,聞いて見ると,どうなるでしょう。
Uが無いので「Tの反対側」とか言いだし,それが簡略され「反対T]となり,もっと簡単に「はT」となっていたら,「T‘(Tダッシュ)」の発想が出てきます。
こういう発想も面白いですし,文字がないととたんに不便になるので,説明しやすい所に記号を書くことが大切なんだと実感もします。

「習った事項がもし使えなかったら・・」
これをちょっと体験させると,算数で学んだ事項の大切さが大きくふくらみます。

『認識と言語の理論』を久々に読み返しました

b8443和歌山の奥田先生が,『奇跡のソフトで 小学校の算数がスッキリわかる』の学習画面一覧を作ってくれました。
http://www.geocities.jp/y_okkuu/2014/genki-soft.pdf
算数ソフトファンの先生,ぜひ,↑をご覧下さい。
いろいろなソフトが,この本の中に収録されていることがわかります。
かなり,お買い得ですね。
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さらに,6年の比の学習で使えるソフトの活用例もアップしてくれました。
こちら です。
こういう活動をして下さる奥田先生に感謝です!!
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この夏は,いつも以上に外出が多く,道中読書が進んでいます。
算数関係の本も読みますが,ちょっと珍しい本を読み返しました。
それは,b8314三浦つとむの『認識と言語の理論』です。
50年ほど前の本です。
学生の頃に学んだ弁証法を,この本からも学びたくて,難しい!と思いながら読んだ,懐かしい本です。

読んでいる途中に,仮説実験授業の庄司和晃先生の「三段階連関理論」が出てきました。
そうでした。庄司先生と三浦氏は仲が良かったんだ!と,あの当時の思いがよみがえりました。
おかげで,頭の中は弁証法でギラギラになりました。

そうして,今日。
認知症などに詳しい社長さんとお会いしました。
簡単な,認識と脳の関係を聞くことができ,勉強になったのですが,聞いている私の頭の中に,三浦つとむや庄司和晃がゆらゆらしています。
次第に、認知症と認識論がどう重なるかが気になってきました。
これは、面白い勉強になりそうで、近いうちに、認知症方面の本を1冊読んでみたいと思いました。