Monthly Archives: 3月 2012

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岩﨑淳先生の『新しい国語科教育 基本指導の提案』には,学習院の風が!

学習院中等部の岩﨑 淳 先生の新刊『新しい国語科教育 基本指導の提案』です。

岩﨑先生は,教育出版の小学校・中学校の教科書編集委員もされていますが,学習院中等部の先生でありながら,学習院大学・学習院女子大学・早稲田大学でも教鞭を執られています。

学習院・教科書編集員・大学。

私のような在野から見ると,まさに,「ストライクゾーンのど真ん中」というイメージです。
とくに,関心が高まるのは,学習院です。
学習院でどんな学習がなされているのか。
それを学ぶだけでも,大きな修養になると思っています。

副題にある伝統的な言語文化の指導が真っ先に書いてあります。
その中で響いてきたのは,老舗の話しです。
老舗の経営のコツは,思い切ったことをしていくこととあります。

「コツ」というのは,小手先のことではありません。
「コツ」は,漢字で「骨」と書きます。
もっとも重要な勘所,それが「骨」です。

古典は継承することであり,その学びから自分を新たに創造することです。
学習院の風を感じてしまいます。

この本は3月22日に発売なのですが,amazonnではすでに販売されています。
私は学会で先行発売されたので,そこで手にし,岩﨑先生からサインを頂きました。
読み進めながら,学習院の風にあたることができました。こういう国語,嬉しいです!!

深澤先生の授業を見てきました

一日公開をするとメールに書いてあったので,ちょっと行ってきました。

見学した授業は4時間目と5時間目。
子どものやる気,取り組み,スピード・・・。見事でした。
途中から気になったのが,学級づくりの全体の構造です。
4時間目が終わり,給食に移り,ああなるほどと,かなり合点がいきました。

協議会では,深澤学級の見えてきた構造を話しました。
子ども達はスポーツチームの選手であり,劇団の団員であり,といった所に位置付いており,深澤先生は先生でありながら,監督でありコーチなのです。
ただ,このチーム・団といった比喩では,4月のスタートにおける取り組みをカバーできません。
この部分のカバーとして必要な頭は,大衆運動・大衆組織の論理です。
私の話を受けて,この不足部分を具体的に話していた久さんはさすがでした。

深澤学級の全体の論理については,いずれ,本人がどこかにバシッと書くと思います。
「学級づくり原論」
こんなタイトルでしょうか。
読んでみたいですね。

懇親会では羽鳥先生と少し歓談。
日本人を育てる研究の話しです。
私の作法研究と少し重なる所があり,羽鳥先生の向かう所などを伺えたらと思っていました。
でも,やっぱり酒の席はダメですね。
雰囲気がイマイチなので,まともな話しは前に進みません。
日を改めて,羽鳥さんとは話したいと思います。

道中読んでいたのは,『都鄙問答』。石門心学の石田梅岩の本です。
心学と書いてあると,心理学かなと思えてきますが,左に非ず。
江戸時代の思想書です。

面白かったのは,イザナギ・イザナミの「殺す生む」の話しが,生きるための殺生と関連づけられたいたことです。苦笑しつつも,このつなげ方の姿勢が勉強になりました。
短気の論理もわかりやすく,面白いです。この論理を板に付けようとすれば,それはそのまま優れた修養になります。深いです。

こういう細かい面白さが所々に書かれているので,思想書は魅力があります。
でも,一番の楽しみは,「人としての考え方」です。現象面に目を奪われないしっかりとした考え方の素養を養えます。

本を読みつつ,つらつらと思ったことは,「姿勢の研究を城ヶ崎先生と進める必要があるな」ということです。

 

「正の数・負の数」の乗法(中学1年数学)

中学1年生で「正の数・負の数」を学びます。

概念としてなかなか難しいのが「負の数」です。
たとえば,右のソフト画面の「(-4)×(+3)」は,どう考えたらよいのでしょう。

紀元前の大数学者ディオファントスは,方程式を解いて答えが負の数になる場合は,答えがないと考えていました。代数学の父と呼ばれる偉大な数学者ですが,負の数は理解が困難だったのです。

「(-4)×(+3)」を,小学校的な言い回しにすると,「1つ(-4)の物が,(+3)ずつあります」となります。
具体的な言い方になっていますが,逆にわかりにくいです。
マイナスは,物で説明するのが難しいからです。

負の数をわかりやすくしてくれたのがデカルトです。
座標で示すと負の数は,急速に把握しやすくなります。
矢印がつくと,一層わかりやすくなります。

ですので,式の意味を理解するには,式に対応した数直線での図を見せることが大切なこととなります。
一つだけでなく,幾つかの式とそれに対応した図を見せます。
すると, 生徒は生徒なりに頭が働き始めます。
どういうきまりになっているのか,きまりを見いだそうとします。

「×(+3)」は,元の数の方向に矢印が3倍されているなぁ。
「×(-3)」は,元の数と逆の方向に3倍されているなぁ。

式と図の関係から何かしらのきまりを読み取った時に,頭の中で中学生らしい「負の数への理解」が始まるのです。
この時に,理解を一層強めてくれるのが,「用語」です。
「正の数」とか,「負の数」という言葉です。

用語が使えると,
そうか,「×(正の数)」は,元の数の方向に正しく倍するのだ。
「×(負の数)」は,正しくないから,負けているから,逆の方に倍するのだ。
などと,用語に絡めて,それなりの理屈を付けやすくなります。

日本語の算数・数学用語は,その多くを漢字で表します。
その漢字の訓読みを使うことで,理解を強められる場合があります。
「垂線」の「垂」などもその一つです。「垂れる」と訓読みできると,垂線の理解が一層良くなります。

こうして理解できたら,翌日もまた式と図のつながりを見せて,理解が定着するように働きかけます。

このような理解を助ける数学ソフトの開発を,この先も進めていきたいと思っています。

ジュンク堂の『書標』に関大初等部式が!

「ジュンク堂」という書店をご存じと思います。
非常に大きな,あの本屋さんです。

そのジュンク堂さんが毎月『書標(ほんのしるべ)』 を発行しています。
『書標』には,たくさんの本が「今月のおすすめ」として紹介されています。
その3月号の「人文科学」のページに,『関大初等部式 思考力育成法』が紹介されていました。

考えることを考える学習を記録した画期的なルポルタージュと記されています。
そうして,おすすめをしてくれた方は次のように記しています。

「考動力」こそ人間力を鍛える。

「考動力」。この言葉が良いですね。
「考えて動く力」です。

『関大初等部式 思考力育成法』が掲載されたページに,もう3冊の人文科学の本が紹介されています。

『哲学大図鑑』(ウィル・バッキンガム著,三星堂)
『神に異をとなえる者』(アベ・ピエール著,新教出版社)
『神社のいろは』(神社本庁監修,扶桑社)

哲学が図鑑になってしまったのかと思いきや,きちんと論じられていることが書評を読み分かりました。
得意とする分野ではないのですが,ちょっと気になる本です。

『書標』の表紙の題字は陳舜臣氏です。

朝日新聞の窓に渥美学級が!

朝日新聞の窓です。
算数ソフトを使って授業をしたら,難聴のお子さんが数を理解できるようになり,九九も難なく習得していった渥美学級の様子が記されています。
胸が熱くなります。
障害のあるお子さんの算数理解へのお手伝いができたのです。
嬉しくてなりません。

渥美先生から,大きな成果が出ているとの話を知らされたとき,居ても立ってもいられなくなり,釧路まで行きました。
そこで見たのは,算数ソフトをごく自然に使っている楽しい暖かい授業でした。
どの子もこの子もどんどん手を挙げて発表しています。
クラス全体が優秀な子の集まりなのかと思うほどでした。

ところが,北海道の釧路市は学力低下で大変な事態になっています。
学力テストで北海道は全国47位です。
釧路市はすべてのテストで北海道内の平均点を下回っています。
何とかしなければと,学校が地域が動き出して子ども達の学力回復に取り組んでいます。北海道新聞がそのことをとりあげています。
http://blog-imgs-44-origin.fc2.com/k/o/u/koulutus/20120306_dousin_gakuryokukiki01_mini.jpg

算数ソフトも,釧路の取り組みへの一つの役割を果たしてるのかもしれません。
私は直接何もできませんが,子ども達が算数の力を付けていける,そういうソフトをこの先も開発していきたいと思います。

私も,こんな算数を受けてみたかった!


今月末は,佐賀県へ2回行く予定になっています。
鳥栖市と吉野ヶ里町です。
時間のある限り,呼ばれた先へ足を運び,お話しをするようにしています。

算数でくじけている子を救えたら。
「算数って面白いね!」と思う子が増えてくれたら。
そう願いつつ,出かけています。

主に,小学校の先生方にお話しをするのですが,時として,保護者の方がいらっしゃることがあります。
すると,たいてい感動的に声をかけてくれます。

「私も,こんな算数の授業を受けてみたかった!」

各地で良くお見せするソフトの一つに,6年生の速さのソフトがあります。
パトカーを左右に動かして,道のりを100km~500kmの範囲で決めます。
赤丸を動かして,時間を1時間~10時間の範囲で決めます。

自分で「道のり」と「時間」を決めて,スタートボタン(三角印)をクリックすると,その設定通りの速度で車窓風景(ムービー)が動きます。
設定によって,車窓風景のスピードが変わります。
その変わりようが面白いので,あれこれ設定を変えてやってみたくなります。
そうして,ムービーを動かしている内に,「速さのきまり」が見えてきます。

私が子どもの頃は,マイカーのある家はほとんどありませんでした。
ですので,車窓からのスピード体験は電車に乗る時か,バスに乗るときぐらいです。
およそ日常とはかけ離れた状態でした。
日常的なスピード体験といえば,メーターの着いていない自転車ぐらいでした。
「速い」「遅い」という「速さの程度」を体験し続けるだけの環境でした。

今の子の「速さ」体験は,大変恵まれています。
マイカーに毎週のように乗る機会があり,車のメーターを見て,「時速40km」 を直に感じ取ることができています。
家族旅行で高速に乗れば,「時速80km」も「時速100km」も,広がる車窓風景と共にたっぷりと感じることができます。

こういう状況を考えると,今の子は,だれでも「速さ」の学習をサラリと通過して当たり前のように思えます。
ところが,未だに,「速さ」の学習は子ども達にとって鬼門なのです。
昔も今も,変わらずに「速さ」は困難な学習に位置付いています。

環境が良くなっているのに,なぜ,子ども達の学ぶ力が伸びないのでしょう。
理由は,簡単です。
必要な数値を見ないで体験しているので,算数的には何ら高まっていないからです。

必要な数値は2つあります。「道のりの数値」と「時間の数値」です。
この2種の数値で,「速さ」が決定されているからです。
ですので,この2種の数値を見て「速さ体験」できれば,速さの理解はとても楽になります。
逆に,この2種の数値を見ない速さ体験は,「速い」「遅い」という「程度の理解」はできても,「速さ」が成立する仕組みの理解にはつながりません。
ですので,マイカー時代になっていても,「速さ」は,未だに困難な勉強として続いているのです。

「道のり」と「時間」で「速さ」が決まる,という速さの仕組みの上に立って,ソフトを開発すると,どうなるでしょう。
「私も,こんな算数の授業を受けてみたかった!」と思うほど,わかりやすくなります。

算数は,「数」と「現象」を同時に見たとき,あっと言う間に理解が進みます
中学で学ぶ負の数。この理解が急速に簡単になったのは,デカルトが座標を示したからです。
算数で,デカルト座標に相応するが算数ソフトです。
多いに奮励して,わかりやすいソフトを開発していこうと思います。

佐賀県は,ICT日本一を目指しています。志の高さに感動しています。
佐賀県から,算数の落ちこぼれがいなくなって欲しいです。

村岡さんのブログ「むらちゃんのブックブログ」に,この速さのソフトが紹介されています。詳しく分析されています。