Monthly Archives: 8月 2012

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『新版 分数ができない大学生』面白かった!

10年ほど前に,話題となった本『分数ができない大学生』です。

10年前にも,指導要領が改訂になり,学力低下がひたひたと歩み寄っていた頃です。
生活科などもまだ元気だった頃です。

もっと算数・数学の力を!と打ち出したこの本は,タイトルが実に衝撃的で,日本国中に「こりゃ,いかん!」という思いが走りました。
その本が,10年目にして新版になったので読んでみました。

算数・数学ができない学生が増えていることの報告が著者の先生方から次々に示されています。
その現状を何とかするために,数学の必要性や重要性,知っていると得をするということも示されています。

こういう大きな文脈の話しも面白いのですが,この本は随所に「ああ,いいね!」と思えることが書かれています。
そんなかで,私が感じ入ったのは,次のような言葉です。
◆ 数学は,一つ事を学ぶと,それ以前に学んだ初等的な内容の理解を確実にする。
当たり前と言えば,あまりにも当たり前のことです。
でも,これがなかなか見えないのです。

先日,5年生の立体のソフトが話題になりました。
立体をドラッグして動かすと,立体の重なりの様子が見えます。
それを見て,子ども達の中には,1cm3の立体が何個あるか数える子が出てきます。
何段にもなっているので,それはかけ算で・・となります。
こういう学習をしているときに,「立体の体積について理解できたか」という事の他に,「立体以前に学んだ何かを確実にしている」という視点を持つと,実に豊かな学習をしていると分かります。
算数って,素晴らしいと感じてきます。

「奇蹟の算数セミナー」開催へ向けて!

山口のセミナーへ行ったときのことです。主催者の藤本先生から,「算数ソフトを使った授業のやり方など発表する会を開きましょう!」と熱い御提案を頂きました。
その声を聞いてか,セミナーで算数ソフト活用の実践発表をした佐藤先生が「こんな事があった!」「あんな事があった!」と熱く語っていました。
わき出るように,いろいろなビックリする出来事が続きました。
これほど,良いことがたくさん起こるのですから,やっぱり,そういうセミナーを開こう!ということで,山口の夜は多いに盛り上がりました。

そうして,今,計画を進めているのが「奇蹟の算数セミナー」(仮称)です。 11月開催予定!

「チーム算数」で城ヶ崎先生,佐々木先生に,内容の相談をしたら,どんどん良い意見が出て,これまでにない,とっても充実するセミナーになりそうです。(詳しいことは,確定し次第,お知らせします)

お話しをしてくださる先生方は,算数ソフトを長年使っている腕利きの先生方です。
一つ一つのお話しに,納得感のある指導技術や指導感,授業への哲学思想が学べると思います。

「奇蹟の算数セミナー」開催に向けて,「算数数学好きにする会」のメーリングリストで情報交換を進めています。新たに,佐藤先生,渥美先生,上澤先生にご入会いただき,MLもパワフルになっています。

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中1の数学「空間図形」のソフトを,近々,「もっと!算数」サイトにアップする予定です。
このソフトを見れば,回転体の意味が伝わります。図形の連続が巻き起こす面白さがしっかり伝わります。
この回転体のソフトもインパクトが強いので,数学嫌いな生徒たちも視線が釘付けになります。
そういうときは,その気になっているときです。あれこれ先生が解説したり,生徒に考えを言わせたり,ノートに書いたり・・・。良い感じで授業進みますね。
復習で見せるのも,非常に効果的です。

中学校の先生,アップされたら,ぜひご覧下さい。そうして,生徒さんにぜひ見せて上げてください。

中学1年の投影図のソフトができました!

中学1年の空間図形の中に,投影図が出てきます。
このソフトがようやく仕上がりました。

折り曲げた図と,真っ直ぐな図の両方を見比べることができます。
たいした工夫ではありませんが,三角形が少し動きますので,動かしながら,両方を見ると,それなりに,「きまり」が見えてきます。

・折れている図は斜めにゆがんでいる。
・同じような比率で三角形変化する。
・投影図の点線は,平面図の三角形の頂点とつながっている。
・てっぺんの頂点が底辺の下に来ると,立面図の点線が実線になる。
このような理解ができる上に,数学的センスとして次のことも感じ取れます。
・両方の三角形は似たような比率で変化している。

教科書の図を見て,このようなことがサクサクと頭に理解できる子ばかりなら,何の問題もないのですが,小学校段階ですでに気になっているあの子たちも中学へ進学しています。
頭に強めの「算数バリア」を作っている子です。
中学へ進めばさらに強烈な「数学バリア」になります。

バリア持ちの生徒でも,こういう数学のソフトを見たら,「オッ!」と思います。
ワイアレスマウスを回して,本人に少し操作させたら,「グッ!」と来ます。
面白くなってくると,数学用語も覚え始めます。学んだことが,なんだか簡単に思えてきます。
これが,力が出た一つの姿です。

中学1年の数学ソフト/投影図

授業づくりネットワークの大会では,話題の菊池先生が午後からの御講演となっていました。今や時の人で,超多忙だろうからお会いできないだろうなと思っていました。そうしたら,午前のプログラムが終わったところでお会いできました。良かったです!多くの先生方が前向きに体を張って頑張っていることを世間に伝えて欲しいです。

長瀬先生ともお会いし,一緒にお昼を頂きました。社会の先生で,江戸時代の学習法などからも多いに学ばれています。私も感心があるので,この先もあれこれ情報交換できたら,楽しいだろうなと思います。そう思って話しをしていたら,『「学び」の復権』(辻本雅史)を紹介してくれました。購入して読んでみたいと思っています。
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驚くほど複雑なプログラムを求められているのがこの投影図のソフトです。
昔は小学校でも教えていたのですが,なかなか投影図の概念を伝えるのは難しかったです。
それを少しでも「なるほど,そういうことか!」と思ってもらえるように,工夫して作り込んでいます。
今,ようやく半分ぐらいです。ここまでできたので,あと,もう一踏ん張り頑張って,あれこれ作り込みを進める予定です。
完成は来週中かなと思います。

佐藤先生にインタビュー!

上條先生とお会いして,あれこれ話し込んで,授業づくりネットワークの大会にちょっとだけ参加することにしました。
開会式の終わり頃に入れたので,お目当ての武田信子先生と上條先生の講演と対談に間に合いました。 
会場の後ろの方に座って,フロアをざらっと眺めたら,定位置に佐藤先生がビデオをセットして座っているのを発見。この段階で,講演後は佐藤先生にインタビューと決まりました。

インタビューして,実に感動しました。

佐藤先生は,5年生の途中から算数を任されました。最初の仕事がテスト。なんと,女子は平均点が20点なのです。やる気が感じられない答案用紙。テスト時間も45分では終わらず80分かかり,それでも成果が出ないという惨状でした。

その次の単元を佐藤先生が指導するのですが,まだ,若いので腕が思うようには立ちません。とりあえず,普通の指導をし,最後の振り返りで算数ソフトを30分ほど使いました。
そうしたら!そうしたら!
子ども達がみるみる変わっていったのです。

ワイアレスマウスで順にクリック。これを一人一人やらせたら,もう,算数ソフトの世界に夢中です。「もっとやりたい!」の心に急変したのです。
そこで,佐藤先生は子ども達に言いました。
「何回か見たので,何か気がついたことがあるだろう?」「何か,きまりが見つからなかったかい?」
このような言葉かけをしたら,子ども達は口々にあれこれ言いだしたのです。算数無気力だった子ども達が,一気に算数のきまりを言い出しました。
佐藤先生は,子ども達の言葉を受け,黒板にきまりを整理したそうです。
そうして,ソフトをやり終え,「自分なりのまとめをしましょう」「何が分かったか書きましょう」と投げ,「算数用語を最低1つは入れて欲しいな」とも促しました。

きまりを見つけさせる。
子どもの言葉を整理する。
自分なりにまとめさせる。(算数用語を使う)

どれも,非常に高度な指導です。それを自然な流れとして使いこなしています。さすがです。

そうして,いよいよテストをしようとしたら,「算数ソフトでもっと勉強したい!」と子ども達が願い出てきました。そこで,「テスト時間が短くなるけど,それでもいいのかい」と返したら,「30分で良いです!」とクラスがまとまったそうです。

算数無気力のクラスが,算数のテストを30分でやり遂げる形にまとまり,しかも,ソフトで勉強を続けたいと願うのです。これこそ,本来の学びの姿です。そんな姿に,あっと言う間に変容したのです。

テストの結果は,男子も女子も平均点で90点を超えました。
算数ソフトを振り返りに活用し,子ども達にきまりを見いださせるように促します。
こうした授業で,驚きの成果です。
しかも,これを若い先生が無理なく自然に行ったのです。
実に,嬉しいです!
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久しぶりに上條先生と!

1年ぶりぐらいでしょうか。
久しぶりに,上條先生とカフェで話しをしました。
暑いのでアイスコーヒーを頼んだのですが,その氷がすぐに溶けてしまうほどの熱い話を上條先生はされていました。「質的研究」の話しです。

私は「質」と聞いてしまうと,どうしても弁証法モードになります。
一つの現象を,変化の一過程ととらえる考え方です。
その変化の途中に,量から質に変わるという驚きの現象が起こります。

でも,上條先生の話される「質」は,こういう質とはちょっと違っていて,その質を説明するために「量」の話しがあり,「量」が排斥している所に「質」が位置していました。
詳しいことは,上條先生がどんどん書き表すでしょうから,そちらを見ていただければと思いますが,この「質」の研究は私が若い頃から着目していたところに,スポットが当たる研究のようで,とても興味を持っています。

「量が排斥しているところの質」という着目は,実に優れたところで,ここを弁証法的な変化の過程として見ていくと,質に着目することが,結果的に量の方にも大きな変化を生じさせる事になります。
ここの理解が小学校の現場ではなかなか見えにくくなっています。また,見えたとしても,大きな変化起こすにはどういうアクションが必要なのか,と言うところで,蓄積された「教育文化」がベールを作ってしまいアクションの創出がなかなか困難になっています。そんなところにも風穴をあける研究になりそうで,興味が湧いてきています。

上條先生とは,またお会いすることになると思っています。
ゆっくりお話しができる時に,研究の続きを伺って,私も私なりに思うところをお話ししてみたいと思います。