Category Archives: 算数

城ヶ崎先生,押田先生とチーム算数

チーム算数が開催されました。
城ケ崎先生と押田先生と私の3人です。

一番面白かったのは,城ヶ崎先生が一般参加したセミナーでの出来事でした。
話し合い活動があったようで,それにまつわる話をしてくれ,非常に納得しました。

私は,スクーで話した,帯分数の歴史を話しました。
そういう話をしていたら,押田先生も城ヶ崎先生も,「歴史」が大事なんだと話してくれました。
特に押田先生は,「算数の歴史」を知りたいし,子ども達にも伝えたいと語っていました。
小学校の先生の視点で,「算数の歴史」がまとめられたら,これは貴重でしょうね。

今回のメインの話は,「習慣は第二の天性」の話です。
この言葉がドンピシャで適用されているのが,算数なのです。
単元事に,この第二の天性作りがされている大変珍しい教科が算数なのです。
それを簡単な図にして示しました。
その図は,パッと見,「否定の否定」の発展的構造図とも言えます。

「習慣は第二の天性」の事例として,大分の幼稚園の先生にしたように,チーム算数でも「指折り10まで数える」話をしました。

b8300そうして,私が今読んでいる本を紹介しました。
『数の歴史と理論』です。
この本,まだまだ読み始めなのですが,数の本として非常に質が高いです。
何しろ,「4本」とか「2人」という助数詞の背景が記されています。
もう,これだけで,10冊分ぐらいのパワーを感じます。

すばらしい内容が書いてあるのですが,古書のため,本を開くと,古書の香りがただよいます。
ですので,よほど空いている電車の中でないと,開くことができません。
そこが,ちょっと残念ですが,実にいい本です。

スクーで話せなかった「日本最古の分数」

スクーで,算数の話を4本しました。b8302
「1か9分の8は,1なのか,8/9なのか?」
「分母・分子から古代中国を覗く」
「世阿弥も分数を活用していた」
「形式分数って,なんだ」

どの話も面白く語れました。
そうして,最後に,
「日本最古の分数は神社への勅」
という話をする予定でしたが,ちょっと時間が来てしまし,お話しできませんでした。

その話を,ここに書き記しておきます。
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「日本最古」というのは,文献に残っている最古です。
それも,私が読んだ範囲です。
ですので,これからご紹介する分数より,もっと昔に記された分数が出てきたら,この話は第2位,第3位と,順次繰り下がっていきます。

私が発見した最古の分数は,『日本書紀』に出てきます。
天武6年(672年)の事として,ご覧のように登場しています。

己丑(つちのとの うしのひ)に,天皇の勅(みことのり)がありました。
神社の神税(かむちから=税金)は,
3つに分けて1つを神につかえるために使い,
2つ分は神主にわけましょう。

集められた税金の分け方が記されていたのです。

b8301この少し後に,もう1カ所,分数が出てきます。

乙巳(きのとの みのひ)に,天皇の詔(みことのり)がありました。
上戸(かみつへ)には,1町を与えましょう。
中戸(なかつへ)には,半町を与えましょう。
下戸(しもつへ)には,4分の1町を与えましょう。

宅地の分け与えで分数が登場しています。

途中,点々で省略しているところには,次のように出ています。
右大臣に賜う宅地四町。
直広弐より以上には二町。
大参より以上には一町。

分数が出てきた下戸は,わずか1/4町です。
「下戸」という言葉の持つ語感と,最後に示されている順序などから,
かなり狭い宅地なんだろうなと思います。

ところが,ところが・・・。
1町というのは,かなり広いのです。
どのくらいの広さかいうと,400尺四方の土地が一町なのです。
1尺は約30cm。時代が違えば寸法に多少の違いがあるかもしれませんが,
おおむね30cmと考えてみると,1町は1辺が120mの正方形となります。
120m×120m=14400平米です。
これを坪に直すと,4360坪ぐらいです。
ちょっと控えめに,4000坪としても,下戸はその1/4ですから,1000坪の宅地となります。
下戸は,漢字で見るより実に身分が高いと実感します。

天皇のみことのりには,2種類ありました。
「詔」と「勅」です。
「詔」は主に大臣に向かって出されるお言葉です。
「勅」は国民に向かって出される天皇のお言葉です。
宅地の方の「みことのり」は「詔」なので,下戸と呼ばれていてもとっても偉かったのです。
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こういう話をして,スクーの話をおしまいにする予定でした。
また機会があれば,お話をしたいと思います。
ご静聴,ありがとうございました。

※私の読んでいる『日本書紀』は岩波文庫の本です。とても,勉強になるいい本です。

折れ線グラフのソフトの面白い使い方

今度の日曜は,スクーです。
「横山験也の算数の授業」が生放送されます。
お時間のある先生,是非ごらんください。
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b83044年生の「折れ線グラフ」の「02F、折れ線グラフをみましょう/各地の天気/関東」のソフトです。

折れ線グラフって,どんなグラフなのか,その様子を見るためのソフトです。
各地の気温のグラフを見せて,感想を語り合うのも良い勉強になります。
なにしろ,グラフを補助する表も載っているので,数字での把握ができます。
数を伴った感想が出てくれば,それは質の高い感想となります。

このソフト,ちょっと工夫すると,面白い現象を見ることができます。
「自分の県を中心に,他の県をみる」という見方ができます。
たとえば,私は千葉県なので,まずは千葉県をクリックします。
すると,ご覧のように千葉県の平均気温の表とグラフが出てきます。
次に,茨城をクリックします。
すると,グラフが千葉から,茨城へとジワーンと変化します。
折れ線の両端が下がっていく様子がわかります。
どうも,千葉の方が暖かいとわかります。

また,千葉をクリックします。次に栃木をクリックします。
栃木も折れ線の両端が下がっていく様子がわかります。

こんな風に,自分の県を見てから,他の県を見る。また,自分の県を見てから,他の県を見る。
これを繰り返していくと,近隣の県との微妙な違いに気がつきます。

そうして,重要なのは,その微妙な違いは「折れ線」だとよくわかるが,「表」ではよくわからないことです。
「折れ線」と「表」。
両方が表示されていますが,パッと見て変化がわかるのが「折れ線グラフ」の特徴だと実感的にわかります。
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b8452関大初等部式 思考力育成法
小学生がベン図を使って思考するなど,驚きの連続です。

「算数ソフトキャラクター解説

b8306工藤先生から,「算数ソフトキャラクター解説」第2号をいただきました。
今回のは,6年「比」、「比例」「おこり得る場合」です。
算数ソフトファンの皆さんには,授業の様子が思い出されてきますね。

さて,工藤先生の解説をご紹介します。
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①・「クリックしてくだ青サイ」
01号にて紹介した「クリックして赤サイ」との違いは、
右向き、別数字表示、次の作業を誘導するという点。

②・「クリックしてくだちょうちんアンコウ」
クリックシリーズの別キャラ。
いくつかの数字をまとめて変更する際に登場。

③・「歴史キャラ連合」
色々な単元に登場する、歴史キャラ連合。
歴史の学習と絡めると2倍おいしい。しかし、深追いすると時間がかかる。
聖徳太子、藤原道長、清少納言、源頼朝などそうそうたるメンバーが勢揃い。

④・「順数字」
とっても地味な表示キャラ?ではあるが、とっても大事な順番を表し、
順を追って作業の手順ややり方、注意ポイントなどをおさえる。

@@ おまけの隠れキャラ @@
⑤◇「よっしゃー!」
よっしゃー!というかけ声と共に出現。
その名もそのまま「よっしゃー!」だが、さてどこに出てくるでしょうか。

◇「いよー!」
画像の表示はないが、量や数字が増えたり減ったりする際の効果音。
他のことに気をとられ脇見をしていたやんちゃ君も、この音一つで画面に大注目。

◇「歌舞伎音」
画像の表示はないが、量の変化などの際に鳴り響く歌舞伎的な効果音。
間をとるにも最高。子ども達の中にはリズムをとる子もいたりする。
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楽しい内容がざくざくですね。

中でも,感動的なのは,1つめの◇の2行目です。
「他のことに気をとられ脇見をしていたやんちゃ君も、この音一つで画面に大注目。」
何か,他のことに気をとられること,誰にでもありますよね。
そんなとき,「こっちを見なさい」と言いたくなりますが,効果音が聞こえて,さっと学習に戻ります。
こういうのスマートですよね。

また,2つめの◇も良いですね。
「子ども達の中にはリズムをとる子もいたりする。」
子ども達の心をつかんでいますね。
これこそ,「楽しい」という状態です。
孔子の言葉(論語)に,こんな言葉があります。

子曰く,
これを知る者は,これを好む者にしかず。
これを好む者は,これを楽しむ者にしかず。

知っている人は立派ですが,それを好んでいる人にはかないませんね。
好んでいる人もすばらしいですが,それを楽しんでいる人にはかないませんね。
というような意味です。

まず,楽しんで取り組めるように工夫することが,学習の第1の要件です。
算数の授業に算数ソフトを活用している先生のクラスは,この第1要件が満たされていますね。

3年生の小数のソフト

b83083年生の小数のソフトです。

10のカード。
1のカード。
0.1のカード。
それぞれが,位のコーナーに入っています。
それを見て,いったいどんな小数になるのか,答えていくソフトです。

これを実際にカードを使って授業をしたら,大変だと思います。
大変な上に,授業のテンポがもたもたします。
右の47.8を出題するには,4+7+8で,合計19枚のカードを黒板に貼り付けることになります。
結構な時間がかかってしまいます。
何問も出すのは,なかなか大変ですね。

それがクラウドをポンと立ち上げると,この問題がクリック一つで出題できます。
パッと問題が変わるので,子ども達も真剣に見て,さっと答えようとします。
このスピード感。意欲を高めます。

数回問題を出すと,素早く答えられるようになってきます。
そうなったら,「10問連続,気合いで答えよう!」などと出題することもできます。
ちょっとしたスピードアップは,子ども達も大好きです。
チャレンジ精神に火がつく感じになります。

もう大丈夫となったら,次につなげる出題をしてみるといいです。
クリックして,問題が出たら,すぐには答えず,次のように言わせます。
「10が4こと,1が7こと,0.1が8だから,47.8です!」
示されている仕組みを言葉にして言わせる学習です。
すると,そういう文章で示された問題への抵抗もぐっと少なくなります。
言い回しになれることもありますし,意味を言葉としても理解できる力がつくからです。

青・黄・赤の「?」ボタンがあります。
これは実に重要です。
「赤?」をクリックすると,0.1が1つずつ増えていきます。
0.1が9になったとき,「さて,もう1回,赤?をクリックすると,どうなるでしょう???」と聞いてみましょう。

クリックすると,1が1つ増えて,0.1が全部無くなります。
繰り上がるのです。
この繰り上がっていく様子も,算数としては重要なポイントです。
位取りで表されている数の持っている,実に面白い仕組みなのです。
何度か見ることで,数の概念がまたひとつしっかりしてきます。
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先ほど書いた,「仕組みを言葉にする学習」は,意外と重要なところです。
ソフトを使うと,この方面の指導も繰り返しできるので,効果的に行えます。
かけ算九九の「仕組み言葉学習」について,
7月に開催された「事前学習法説明会in千葉」で上澤先生と藪田先生にお話ししました。
両先生,感動していました。

西村茂樹氏の『日本教育論』

昨日,記した西村茂樹氏。
道徳を専門としている先生方の中で,歴史的にも学んでいる先生は,一度はチェックをされたことがあるのではないでしょうか。
文部省編纂局長として『小学修身書』を著した方です。
近代道徳の祖とも,小学校道徳の祖ともとらえられる,重鎮です。

その西村茂樹氏は,明治23年に『日本教育論』を講演しました。
それが,本として伝えられています。
この『日本教育論』の中に,論語の一節が2カ所出てきます。
その一つが,孔子の教育思想を現した部分です。

b8309--
子曰く,
憤(ふん)せずんば,啓(けい)せず。
悱(ひ)せずんば,発せず。
一隅(いちぐう)を挙げて,三隅をもって返らざれば,
則(すなわち)ち復(また)せざる也。
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学びたい心が膨らんで来たら,ひらき導きましょう。
蓄積されて言いたくてしょうがなくなったら,ひらき導きましょう。
一つの隅(すみ)を持ち上げれば,たくさんの隅(すみ)が持ち上がりますよ。
でも,そうならなかったら,まだ1つの隅が熟されていないのですよ。

とまあ,こんな意味です。

この教えは,算数ソフトを使って授業をしているときの様子とよく似ています。
ひとたび,算数ソフトを使って授業をすると,子ども達は,また明日も算数ソフトを使って勉強をしたいと望んできます。
これが,「憤している姿」です。
こういう状態になったら,先生が教えたい方向へ導くことができます。
また,ソフトを繰り返し見ている内に,十分な蓄積がなされ,何かしら気づいたことを言いたくなってきます。
これが,「悱している姿」です。
こういう状態になったら,発言をさせ,教科書を見せ,導くことができます。
ソフトが滲透し始めた頃,よく,城ヶ崎先生がこういう様子を語ってくれていました。
ソフトを使うと,勉強したがる。
同じソフトを何回か繰り返すと,何か言いたくなってくる。
そんなとき,良い感じで指導が入れられるということです。

算数は「一を聞いて十(たくさん)を知る」勉強です。
1つの「きまり(原理)」をしっかり理解すれば,それを使って,たくさんの問題を解くことができるようになります。
これが,「一隅を挙げて,三隅(たくさん)をもって返る」です。
でも,三隅(類似問題)に取り組ませても,それがよくわからない場合は,もとの一隅(きまり)がしっかり習得し切れていないのですよと,孔子は教えてくれています。

明治16年に『改正教授術』が世に出て,大ヒットしています。
この本に出ている新しい指導法は,それまでの暗記中心の指導法とは異なり,子ども達のやる気を起こす方法でした。
子ども達の能力の開発するので,西村茂樹氏は「開発法」と述べています。
これが,孔子の教育思想と同じなのだと述べています。
西洋・東洋,互いの良いところを教育に取り入れましょうと,非常に先進的な考えが記されているのが『日本教育論』です。

「憤している姿」になる指導。
「悱している姿」になる指導。
目指していきたい姿ですね。