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岩﨑淳先生の『新しい国語科教育 基本指導の提案』には,学習院の風が!

学習院中等部の岩﨑 淳 先生の新刊『新しい国語科教育 基本指導の提案』です。

岩﨑先生は,教育出版の小学校・中学校の教科書編集委員もされていますが,学習院中等部の先生でありながら,学習院大学・学習院女子大学・早稲田大学でも教鞭を執られています。

学習院・教科書編集員・大学。

私のような在野から見ると,まさに,「ストライクゾーンのど真ん中」というイメージです。
とくに,関心が高まるのは,学習院です。
学習院でどんな学習がなされているのか。
それを学ぶだけでも,大きな修養になると思っています。

副題にある伝統的な言語文化の指導が真っ先に書いてあります。
その中で響いてきたのは,老舗の話しです。
老舗の経営のコツは,思い切ったことをしていくこととあります。

「コツ」というのは,小手先のことではありません。
「コツ」は,漢字で「骨」と書きます。
もっとも重要な勘所,それが「骨」です。

古典は継承することであり,その学びから自分を新たに創造することです。
学習院の風を感じてしまいます。

この本は3月22日に発売なのですが,amazonnではすでに販売されています。
私は学会で先行発売されたので,そこで手にし,岩﨑先生からサインを頂きました。
読み進めながら,学習院の風にあたることができました。こういう国語,嬉しいです!!

ジュンク堂の『書標』に関大初等部式が!

「ジュンク堂」という書店をご存じと思います。
非常に大きな,あの本屋さんです。

そのジュンク堂さんが毎月『書標(ほんのしるべ)』 を発行しています。
『書標』には,たくさんの本が「今月のおすすめ」として紹介されています。
その3月号の「人文科学」のページに,『関大初等部式 思考力育成法』が紹介されていました。

考えることを考える学習を記録した画期的なルポルタージュと記されています。
そうして,おすすめをしてくれた方は次のように記しています。

「考動力」こそ人間力を鍛える。

「考動力」。この言葉が良いですね。
「考えて動く力」です。

『関大初等部式 思考力育成法』が掲載されたページに,もう3冊の人文科学の本が紹介されています。

『哲学大図鑑』(ウィル・バッキンガム著,三星堂)
『神に異をとなえる者』(アベ・ピエール著,新教出版社)
『神社のいろは』(神社本庁監修,扶桑社)

哲学が図鑑になってしまったのかと思いきや,きちんと論じられていることが書評を読み分かりました。
得意とする分野ではないのですが,ちょっと気になる本です。

『書標』の表紙の題字は陳舜臣氏です。

長瀬拓也先生の『社会科授業のつくり方』

若い先生が教育書を書いています。
実によいことです。

長瀬先生の本を読むと,まず驚くのはその筆力です。
日頃から,かなり本を読んでいるのだろうなと思います。

若い頃の私は固い感じで書いていましたが,長瀬先生の文章は暖かいです。
その暖かさで『社会科授業のつくり方』(黎明書房)を書き上げています。
その根本として,学級経営という立ち位置を感じさせる本です。

面白いのは「とりあえず大きくしてみよう」です。
当たり前のことが,しっかりと書かれているのがうれしいです。
社会の名人,有田和正先生も資料は大きくして子ども達に提示しています。

5W1Hも載っています。課題づくりに役立つとあります。
その章には,授業の流れの大まかな学び方も書いてあります。
そこにある,「守破離」を見て,この本は「守」の本なのだなと思った次第です。

「まだ若いけど,いつか本を書きたい」と思っている先生にも,良い刺激を与えてくれる本です。

有田和正先生の新刊『 社会科授業の教科書』は4月に発売になります。

 

『日本語小文典』はグッドです!

『日本語小文典』は良いです。

400年前の日本の言葉,発音がびっちりと記されています。
しかも,その言葉は「公家・武家」階級の言葉です。
なかなか知り得ない世界の言葉が記録として載っているのがこの本です。

読んでいて惹かれたのは,公家・武家での美しい言葉遣いです。
例えば,下のように記されています。
「二つの否定によって肯定を表すと,非常に美しい表現となる」

二重否定は論文では嫌われる表現です。
しかし,日本人の語感として,美しさを感じさせる表現だったのです。
400年も前から美しさが込められており,今も日常の中で自然に使われています。
と言うことは,二重否定の表現を美しいと感じるのは日本人の語感なのだと言えます。

そんな思いをあれこれ沸き立ててくれます。

この本を記したのは,日本人ではなくポルトガルのロドリゲスさんです。
外国の方が日本語について,岩波文庫で上下2巻になる大作を書いたのです。
さらに,驚くのはタイトルに「小文典」とあるように,この本の元になっている「大文典」があるのです。
なんという頭の持ち主なんでしょう,ロドリゲスさんは。

伊能忠敬の地図製作に感動した事がありますが,このロドリゲスさんの仕事から大きな感動を受けています。
ロドリゲスさんや伊能忠敬さんに,「キミもやるね」と言ってもらえるように,ソフト開発を多いに進めたいと思います。

『関大初等部式 思考力育成法』圧巻は24ページから!

思考を「図」という形で迫って行ったこの本は,読み返しても実に良く納得します。

『関大初等部式 思考力育成法』
圧巻は,24ページから。

指導要領を「思考スキル」という観点から分析しています。指導要領をそのまま受け止めるのではなく,思考法という視点で読み直すだけでも,実に素晴らしい読み方です。

各教科毎に「思考ルーブリック」 を設定。普通は,教科毎に何か束ねたら,それで完結するのですが,関大初等部は,そこからさらに思考法を前進させています。
教科横断的に「思考」を見直したのです。
そうして,見いだしたのが31個の「思考スキル」。
実にすごいです!

さらにすごいことが,その先に書いてあります。
31のスキルを,十分に吟味し,18のスキルに集約したのです。
それから,さらに考えることに特化した6つのスキルに絞り込みました。

この指導要領からスタートし,教科を横断させ,ついに6つのスキルへと絞り込む過程。
ここは,武道など実技的な技術を学んだことがある方には,見事!と感じられるものがあります。

技の多さは入門期に向きません。
高度な身体能力を発揮する武道でも,学び初めは数種類の基本技です。それをしっかり学び,体得するにつれ,動きの変化が別の技ともなり,あるレベルを超えると,自らの創意工夫による技へと質的に高まっていきます。

同様に,思考の技として,図を使った6つのスキルを徹底して学んだら,その先,どうなるのでしょう。
何か考えるときに図面が自然と出てきて,それを頭の中でサラッと操作して,大きな流れや個々の場面をイメージする優れた能力になると推測できます。
関西大学初等部はまだ4年生までしかありません。この先,さらに研究的実践が進むことを期待してやみません。

坪田耕三先生の『算数のなぞ』は,素晴らしい!

尊敬する坪田耕三先生の『算数のなぞ』です。

表紙を見ると,子ども向けの本だなと思い,教師としては購入をためらいたくなります。
しかし,この本はお薦めします。
なにしろ,算数の奥深いところがしっかり記されています。
その上,簡潔に書いてあるので,実にわかりやすいです。

◆3年生,4年生の学年末といえば,「そろばん」でした。
かけ算九九で「ニニンシ」「シイチシ」と「が」がつくのは,このそろばんと関係しています。
◆分数の横棒の名前,坪田先生に教わりましたが,それも載っています。
◆計算の「アルゴリズム」が人名が由来であることも載っています。

教科書に書いてある内容をきちんと指導することは必須のことです。
ですが,そこにちょっとした算数的教養をまぶせると,算数の質がグッと高まります。
この本にはそういう材料がたくさん載っています。

感動的なのは「おでんのマーク」です。
かけ算で数を表すとどうなるか。
なんと,素数と合成数が楽しく学べるのです。
それを表にすると・・・・。

坪田先生の算数は最高です。