Category Archives: 作法

自己規準からの価値感情

普通に座っているだけで,「横山先生は,姿勢が良いですね」と話してくれる先生がいます。
そういう一言を言われると,私もありがたい気持ちになります。
また,同時に,良い姿勢を見て,それを「良い」と感じる教師として感覚を持っている先生がいることにも,ありがたさを感じます。

自分が普段出来ていないことを,良いことだから出来るようにしましょう,と言われても,「姿勢なんか・・・」とか,「そんなの出来なくたって・・・」という思いが自然に湧いてくることがあります。
「自分は出来る・自分は出来ない」という所からも,感情はわき出てくるからです。自己規準からの価値感情の発生です。ごく自然なことです。

この自己規準からの価値感情ですが,不思議と出てこないところがあります。
道場や稽古場などです。
正座を見ても,そうするのがノーマルな場なんだ,そうしないと学べないんだと,頭が了解するからです。規準が「自己」から「道場」へ移動しているからです。

『子どもの作法』椅子に座る時は姿勢よく座るものだと了解してしまえば,「姿勢なんか・・」という思いを振り切ることが出来ます。
こういう,自己規準からの価値感情を乗り越え,価値基準を高めることが作法の学習なのです。

では,作法ってどんなことなのか。
一言で言えば,この本のタイトルにある「ちゃんと」ができることです。
「ちゃんと」を進めていこうという心を作ることであり,「ちゃんと」が自然に備わっている状態へと自分を改善していくことです。
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いかにもそれらしく!

二宮神社二宮神社の屋根です。
国語の教科書の説明文のような「これは,屋根です。屋根の上には棒のような珍しい物が飾れています。これは,何の屋根でしょう。」と,問いかけるまでもなく,神社の屋根だと分かります。
丸太のような形をしている棒を鰹木と言い,板状のものを千木といいます。

こういう「いかにもそれらしい」という姿,私は良いものだと思っています。

二宮神社を参拝した日,セミナーに参加した皆さんと道を歩いていました。
途中で,自転車をひいているおじいさんから,「どこから来たのですか」と声をかけられました。それに応えていると,おじいさんは「先生方ですか?」と尋ねてきました。
私達は先生らしく見えたのです。
大方の男性は土曜日ですがネクタイをしていました。その上,あちこちを見聞するように歩いていました。
こうしたことが,他の人の目から見て,先生らしく見えたのでしょう。
ほんのりとした心地よさを感じました。

二宮神社しめ縄も実に良かったです。
これより先は神様のおられる神聖な世界です。私達のいる世界との境目を表してます。結界です。

このしめ縄は,日本書紀に出てきます。神代上。
天照大神が天の岩戸に隠れ,みんなでお祭り騒ぎをし,ちょっと岩戸をあけたとき,手力雄神(たちからをのかみ)が手をとって引き出しました。その後,中臣神(なかとみのかみ)・忌部神(いみべのかみ)が端出之縄(しりくめなは)を界(ひきわた)しました。
しめ縄のはじまりはこの時のこととされています。
しめ縄にも長い歴史があり,それがしっかりとした姿として,現代にも続いています。
しめ縄を見ても,神社だと感じられてきます。

二宮尊徳記念館で勉強をしてきましたと御奉告させていただきました。
とても良い一日でした。
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立腰の辻先生,植田先生!

二宮尊徳生家二宮尊徳記念館での修養セミナーは,金次郎の生家見学からスタートしました。
生家は茅葺きなので,月に2回,いろりに火を入れています。
何でも,虫の駆除と,もう一つ大きな効果があるそうです。
偶然ですが,この日は,いろりに火を入れる日でした。ですので,火のついたいろりを囲んで,記念館の方のお話を伺うことが出来ました。

いろりの火にあたりながら,お話を聴いていたのですが,これが思っていたより暖かいのです。建物の戸は開いているのですが,それでも,暖かく,寒さを感じません。
火との距離が,ほど良くできているのだと感心しました。

会館に入り,ビデオを視聴。
それから,会館の方のお話を拝聴。

辻学級そうして,研修室に移動し,私の話からスタートしました。
その後,お昼をいただきながら,木更津技法研の先生方の発表です。

最初は辻先生。
卒業式練習のまっただ中だったためか,立腰の話でした。
辻先生のクラス(5年生)の正面黒板の上には,ごらんのように立腰の絵が掲示されています。
この絵の伝わりを更によくするために,「常に立腰」と辻先生が掲示されました。
卒業式の練習も,その初回に立腰をキチッと指導されたそうで,一気に子ども達の雰囲気が高まったそうです。

次の発表は植田先生です。植田先生は,昨年度は在校生の卒業練習の指揮をとったそうです。立腰でしっかり進めたら,練習時間が2時間ほどあまったそうです。
今年は卒業生の担任です。
「小学校最後の日を,最高の姿勢で終わりにしたいか,だらっとした姿勢でおわりにしたいか」と,価値ある選択を子ども達にしてもらったら,みんな最高の姿勢で臨みたいとのことでした。

『子どもの作法』立腰教育を推進実践する先生が,少しずつですが増えています。
立腰は,ただそれを行うだけも,人格形成に大いに役立つ教育です。
年度末を,キリッとした姿勢で終わることが出来たら,いいですね。
終わりよければ,すべて良しです。

立腰教育や小学校作法を推し進めていく時のバイブルになるのが,野口芳宏先生の『ちゃんとができる子になる 子どもの作法』です。もうすぐ,発売になります。楽しみです!
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立腰の新田先生の教室

新田先生立腰の新田先生の教室です。
学級訓の右には,「立腰」とあります。ちょっと感動して,写真をブログで使わせていただきました。

嬉しいのは,「立腰」の隣に,良い姿勢の絵が掲げられていることです。
よく見ると,腰のあたりに,「ここ!」という赤マークがついています。
腰を引いて,おへそを前に出して,臍の少し下にちょっと力を入れます。

立腰の指導がなされているクラスは,普段からの姿勢が次第に変わってきます。
良い感じに変容していくのです。
ですが,いきなり,ずっと良い姿勢となるのは,なかなか難しいです。
最初の内は,少々無理をしないと立腰はできません。
その少々の無理を,先生が意識的に続けていくことで,だんだん出来るようになり,進む子はいつでも立腰をしていたくなってきます。
その少々の無理を自覚化するのが,掲示物です。いいですよね!
そうして,子ども達の姿が凜としてくると,その雰囲気の良さが隣のクラスなどに伝わって行きます。

新田先生の学年は,最初,新田先生だけが立腰教育をされていたのですが,今や,学年の先生が皆さん立腰教育をするに至っています。

立腰が出来るようになると,次は,「軸腰」です。
腰を軸にして,上半身を前に傾けたり,元に戻したりすることに慣れさせます。
すると,机と体の間をどうしてげんこつ1つ分空けるのかの意味が伝わるようになります。

姿勢が悪く,普段から背中を曲げて座っている子に,何度,「げんこつ1つ分空けましょう」と言っても,ほとんどが無駄です。その時だけのげんこつ空間になるだけだからです。

二宮尊徳は,神儒仏(神道,儒学,仏教)について,次のように話しています。
神道は開国の道。
儒学は治国の道。
仏教は治心の道。
『二宮尊徳』中央公論新社)

姿勢は神道でも,儒学でも,仏教でも大切にされています。
それでも,あえて,上の3つのどれに近いかと言えば,行儀作法ですので,やはり,儒学の仲間としての色の濃さを感じます。
姿勢など,行儀作法をきちんと指導する教室が崩れようが無くなるのは,尊徳の言う,「治国の道」にも通じています。
集団を治める道に,行儀作法は無くてはならない学習要素なのです。
『子どもの作法』少々,面倒と思っても,起立・礼などきちんと行うことが,「治級の道」です。

新田先生はじめ,たくさんの先生方が立腰教育を推進してくれています。
立腰教育のネットワークが広がっているように感じています。
いつか,立腰教育セミナー(小学校作法セミナー)を新田先生達と開けたらいいなあと思います。
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野口芳宏先生の『子どもの作法』が出ます!!

『子どもの作法』野口芳宏先生の作法の本が出ます!!
『ちゃんとができる子になる 子どもの作法』です!!
発売は3月20日。

とても楽しみな本です。
どの子にも,しっかりと学んで欲しいことが満載で,しかも,どうしてなのかも記されているので,得心します。

行儀作法は,知っているのが当たり前のことなのですが,戦後の教育では指導要領が取り上げなかったためか,次第に伝わらなくなってきています。
そこをしっかりと学んでいけるのが,この本です。

著者の野口先生が子どもの頃に通ったのは国民学校でした。
戦前の小学校です。
遠い昔の時代となりますが,その頃の1年生や2年生では通知表の教科項目に行儀作法がありました。
ですので,家でも学校でも,人として当たり前にすべき作法を,野口先生はみっちりと学んできた先生なのです。

行儀作法で大切なのは,その所作だけではありません。
どうしてそうするのかという,「価値ある意味づけ」も大切なのです。
これがないと,猿回しの猿と同じで,言われているからやっているという情けない状態になります。
野口先生の作法の意味づけ。これをしっかりと学べるので,この本はとても良い本です。
大人の私でも,「ああ,なるほど!」と納得します。
そうして,野口先生の作法の本が,教育書として登場するのです。
これが,私にはとても嬉しいです。
今,若い先生が増えています。ぜひ,この本を読んでほしいです。
そうして,管理職の先生と同じぐらいに,いや,それ以上に,作法について精通していただけたら,日本の教育はいっそうしっかりとした力強さを持つようになりますね。

話は変わりますが,本のタイトルにある「ちゃんと」。
これを漢字で書いていた本を読んだことがありました。
その本では,「秩然と」と記されていました。
この漢字,良い感じですね!
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姿勢がいいので,ありがたい

人間回復の医学「チーム算数」を開催して,ありがたいなと思うことは,目の前に座っている城ヶ崎先生の姿勢がよいことです。
見ている自分の気分が良くなってきます。
自然,自分も良い姿勢で座っていたくなります。

今回,話題となった書籍に,右の『人間回復の医学』がありました。
この本の中には,立腰教育でも有名な森信三先生の写真が載っています。座卓を挟んで,池見先生と森先生が歓談している写真です。両先生とも正座です。

その写真を初めて見た時,私はとても感動しました。森先生の姿は,やや前屈みになっているのですが,その姿勢は立腰が保持されているのです。
さすが!と唸ったものです。

本文を読むと,次のように書かれています。
「当時,先生は八三歳でしたが,カクシャクとしておられ・・・(中略)・・・私の丸い背中に比べて先生の姿勢の良さが目立っています。」(p151)
お医者さんの池見先生が見ても,森信三先生の姿勢は素晴らしかったのです。

前屈みでも立腰が保持されているというのは,腰を軸にして上体を傾けているということです。立腰と似せて言うなら「軸腰」です。
軸腰が意識できると,授業中の姿勢は森信三先生スタイルになります。
良い姿勢が保持されやすくなるということです。

こういう話から,新年度は立腰の指導を学級開きに・・・という話題になりました。
新年度のスタート。
生活指導だけでも,教えたいことは山のようにあります。
でも,一度に全部を教えることはできません。
何を先に持ってくると良いのか,考える必要があります。

下駄箱の指導をいの一番に!と思う先生もいるかも知れません。
返事の指導を真っ先に!と思う先生もいると思います。
友達を大切に!が先だねと思う先生もいると思います。
いやいや大方全部まとめてだ!と考える先生もいるかと思います。

何を先にするかは,何が学級経営の軸になっているかという考えの表れです。
城ヶ崎先生と話したことは,「姿勢ですね!」でした。
姿勢の指導は,教わる本人そのもの持つ肉体への指導です。
同時に,精神力への指導にもなっています。
肉体を良くし,精神もたくましくする。
要するに,個を静的に強くする指導です。
これを教えると,「姿勢」という言葉が生き生きと活用できるようになります。

下駄箱にも良い姿勢があるんだよ。
返事にも良い姿勢があるんだよ。
こんな感じで,「姿勢」という言葉を比喩的に使うことができるからです。
自分の姿勢をコントロールし,次第に周辺のコントロールも・・・。
こういう姿はいいですね。
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