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「目の子算」から「暗算」へ

以前から、気になっていたことがあります。

頭の中で計算するのは「暗算」。
では、○や/を書いて計算するのは、何と言うのだろう?

ルワンダに限らず、途上国では、3+4を暗算でしないで、○や/を書いて計算しています。
このやり方にも何か名称があるだろうと思っていたのですが、自分の頭の中には用語がありませんでした。

b7456ところが、つい先日、十返舎一九の『東海道中膝栗毛』を少しだけ読みました。
そうしたら、そこに出ていたのです。
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ト五文ヅツ、ひとつひとつにかぞへてめのこざんやうにひったくられ
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「めのこざん」の所に注釈が立っていて、「眼算(まなこ)の転か」とありました。

この「目の子算」という言葉、今はもうすっかり使われていません。
ですが、辞書で調べると、戦国時代や江戸時代には使われています。
貨幣の流通に合わせて発生した言葉のように思います。

貨幣は今も使われていますが、目の子算という言葉は消えました。
これは、明らかに小学校教育の影響でしょう。
1桁のたし算・引き算は暗算でできるようにと教えられているからです。

こういう事が分かってくると、途上国で3+4をする時、○○○○ ○○○と書いてから、それを数えて答えを出すやり方が、戦前、あるいは明治以前のやり方のように思えてきます。
たかが1桁のたし算引き算ですが、ルワンダの子ども達を「目の子算」から「暗算」へ移行できたら、それは歴史的大ジャンプとなりえると感じています。
やりがいのある取り組みです!
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藪田先生が人工知能の本を読んで見いだした指導法

算数ソフトを使って、とても良い成果があったと、藪田先生からメールをいただきました。
単元は、4年生の「大きな数」です。
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学年を4グループに分けたうちの下から2つ目のグループ(19名)を受け持ちました。
単元末テストの結果は85点2名、90点2名、95点9名、100点6名でした。

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平均点を計算したら、95点です!
下から2つめのグループで、上からは3つめのグループが、平均点95点。
これは、実に素晴らしい成果です!!

点数の成果も素晴らしいのですが、今回は、藪田先生が驚きの指導をしていました。
そこをご紹介します。
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『人工知能は人間を超えるか』に出てきた「人間は特徴量をつかむことに長けている。
何か同じ対象を見ていると、自然にそこに内在する特徴に気づき、より簡単に理解することができる。」

ということを頭において学習を進めました。
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「特徴量」「内在する特徴」
これですよね。
同じ対象を見ているというのは、似たような問題を何問かこなしているとと言うことです。
すると、人間はそこに内在する特徴(きまり)に自然に気づくということです。
こんな風になっているんだ!と気がつき、理解が進んでいくのです。

人工知能の本を読んで、特徴のとらえ方に注目をした藪田先生、さすがです!!

さらに、ここから藪田先生は画期的な指導法に気がつきました。
それは、「気づいた特徴を何度も尋ねる」ことでした。
ちょっと長くなりますが、引用します。
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10倍100倍・10でわった数は何度もソフトを繰り返し見せました。
その後、10倍の時は(100倍の時は・10でわった時は)元の数がどう変化するのかを聞きました。

b7458何度も変化する様子を見ているので、0が1つつく(2つつく・1つ減る)という法則に気づくことができました。
最後に1円玉が10枚でいくら?
10円玉を10個にわけるといくら?
などと簡単な数で抑えをしておくと、特に何の助言もなしに教科書問題を解いていました。

数直線の問題も06Bのソフトを繰り返し見せました。
06Bの1〜4は1万ずつ増減する問題、5・6は2万ずつ増減、7・8は5万ずつ増減するソフトです。

1〜4までを見せながら、まずは子供に答えさせ、その後なぜ答えが分かったのかをしつこく聞きました。
「わかっている数を隣どうしで比べると1万違っているから」
「2目盛で2万増えているから、1目盛は1万」
と、いくらずつ増えているのかを気にしだしました。

5・6・7・8のソフトに取り組むとき、最初は1〜4と同様に1万ずつ増減するだろうと予想して間違えてしまう子もいましたが、いくらずつ増えているのか聞きなおすことで注意すべきことが分かったようでした。
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赤文字にしたところが、気づいた特徴を尋ねているところです。

ソフトから出てくる問題を何問も繰り返し行っている子の頭の中には、何かしらの「特徴」が発生しています。
ただ、その特徴は頭の中にいるときは、ぼんやりとしています。
それを藪田先生は誘い出すように、言葉にして出させています。
ぼんやりしていた特徴が、言葉にすることで明確になります。

ソフトで量をこなし、
先生が特徴を引き出し、明確にする。
子どもが自分で理解をしていく授業です。
藪田先生のこの指導いいですね!!

こういう指導法が進められていること、実にうれしいです。

授業では、ソフトの他にも、手作り教材なども使い、楽しんで取り組んだそうです。
その結果、見事、平均点が95点となりました。
すばらしいです。
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分数がわかると言うことは

分数がわかるということは,それは,お母さんの気持ちがわかるということなのです。

2分の1とか,3分の2とか,こういう分数を2年生,3年生で学びます。
算数の時間ですので,分数を数として学ぶので,どこをどう考えてもお母さんの気持ちとは縁遠いです。

でも,ちょっと視点をずらして,家族・身内という視点で分数を見てみると,お母さんが登場せずにはいられなくなります。

ピザを家族で食べるとしましょう。
みんなで平等にわけるために,お母さんは包丁を入れます。
テーブルの上にはカットされたピザがあるわけです。

子ども達はカットピザを食べつつ,「ボクは2枚食べた」などと思うわけです。
このとき,分数で「8分の2食べた」とは思いません。
意識に入ってきているのは,分けられた後のピザ,つまり,分子状態のピザなのです。
1つ,2つと数えることができます。
この数え方はとっても簡単なので,分けてもらう方は,どうしても分子だけを見つづける世界にとどまるようになります。

ところが,お母さんは分子だけを見るというわけにはいきません。
お母さんにとって一番大切なことは,平等に分けることなのです。
自然と分母を見ています。
家族4人なんだから,4等分でもいいし,食べやすさを考慮して8等分にしましょう,などと思っているのです。
その上で,一人一人が何枚になるかも見ています。
お母さんという立ち位置は分母も分子も視野に入れているのです。

分配する側と,分配される側。
分配される側は,いつまでたっても整数で考え続ける立場なのです。
ところが,分配をする側に回ると,必然的に分母を意識せざるを得なくなります。
分数がわかるということは,お母さんの立ち位置である分配する側に立って物事を考える基礎作りにもなっているのです。

だからなのか,お母さんの立ち位置で分ける数の方を分母といい,分けてもらう側の位置で見る方を分子と言います。
実に見事な言い回しです。

分母・分子という言葉は,元は中国語です。
きっと古い時代の中国の家族には,平等に分けることが生活原則としてあったのでしょうね。
平和な雰囲気を感じています。
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ルワンダ渡航で読んだ人工知能の本,良いです!

b7504ルワンダに行く前に,ちょっと調子が悪くなり,荷物を極力減らして行くことにしました。そのため,持って行く本も小さいのを1冊だけと決めました。
選んだ本は,『人工知能はなぜ未来を変えるのか』です。

行きの飛行機で半分弱。
宿で少し。
帰りの飛行機で残りを・・・。
こういうプランで持って行き,ほぼ,その通りのペースで読みました。

読み進めつつ,ふと思ったことがあります。
それは,問題解決学習に幾ばくかの疑問を感じている先生は,この本を読むとすっきり感を味わうのではないかということです。

古典的な本ですが,戦前の藤森良蔵の記した『算数母の心構』に感動をした先生にも,この本はお薦めです。
1つの問題から考えるのではなく,桃太郎の繰り返しで複数の問題に取り組むことで理解していくことがなぜ重要なのか,その理由がこの本にも書いてあるからです。

今日の午後7時のNHKニュースのトップが人工知能の話題でした。IBMの開発した人工知能ワトソンがガンにかかっていた女性を救ったことを報じていました。
夢ではないかと思えるようなことを,一つまた一つと成し遂げているのが,人口知能です。

算数ソフトは人工知能を育てる力を持っていませんが,ブートキャンプの取り組みから,アフリカの子ども達の算数力を急速に伸ばすことができると確信しています。
とはいうものの,途上国の子の計算のできなさ加減は,半端ではありません。
とてつもなく分厚い壁があります。それは,暗算の壁です。
5年生になっても一桁のたし算の暗算ができない子がいるのです。それも,普通にいるのです。
1年生,2年生は壊滅的に暗算ができません。
そこに挑戦しているのが,私たちの「算数ソフト団」です。
現地の先生方と協力をしつつ,また,人工知能からも学びつつ,大いなる前進をと思っています。
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ルワンダの時計屋さんの時計が

b7505ルワンダの首都キガリの繁華街で見かけた時計屋さんです。
高級時計が並んでいるのだと思いますが,私の関心所は,店の看板にかかっている大きな時計です。
この時計を見て,「これは撮影しなければ」と思ったのです。

ポイントは,数字の4です。
普通,ローマ数字の時計は「Ⅳ」と記されるのですが,この時計は珍しい形になっています。

明治時代の日本にもこのタイプの文字盤が輸入されていましたが,今は,ほとんど見かけません。

ローマ数字は,5を中心に,[-1,5,+1,+2,+3],10を中心に[-1,10,+1,+2,+3]と表示されています。
こういう区切りの良いところを中心に前後に数字を用いていく文化が西洋にはあるようで,時計の読み方も,日本の小学校とはひと味違っています。
2時40分は,「3時20分前」と教えるのです。
30分を過ぎたら,○分前という読み方になっています。

日本では,3時40分は3時0分からの続き物として40分と教え,3時50分も3時50分と教えています。
正の数の考え方で押し切っている感じがして,日本の読み方の方が小学生には易しいと思います。
負の数の感覚に近い「前」で教えるルワンダでは,時間の計算は難解だろうなと思います。

時計屋さんの大きな時計を見て,あれこれ,ふと思いました。
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プログラミング教育が始まりますね。良いですね!

次の指導要領の時代から,小学校でもプログラミング教育が始まりますね。
これは,とても良いことです。
プログラミングができるようになると,コンピュータを思い通りに動かせるようになります。
これは,「コンピュータでの物作り」なので,精通すればするほど,精巧な物作りがコンピュータでできるようになります。
この方面,「隅々まで力を抜かずに精魂込めて!」という気質が日本人にはあるので,きっと20年,30年後には,今の私たちには考えつかないような秀逸なものを創り出す日本人が続出するだろうなと,私は思っています。

指導要領では,プログラミングを学ぶのが児童・生徒となりますが,個人的には,志ある小学校の先生にも大いに学んで欲しいと思っています。
なぜなら,日本の小学校教育が非常に優れいているからです。
その優れた教育文化をコンピュータを通じて形にできる先生が増えたら,どうなるでしょう。
日本の小学校教育が質の高いレベルで安定するようになり,歳月を重ねることでその高いレベルを持続的に上昇させる仕組みができます。
これは,当然のように,世界の途上国の教育へも応用することができます。

ですので,指導要領の改訂だけでなく,現役の先生がプログラミングの専門学校に3年5年と通えるような制度を作って,「指導法」という教育の無形文化財を,コンピュータを通じて形あるものに変えていける先生も輩出して欲しいです。

何で,こんな風に思うのかというと,15年前にプログラミング教育を自分で自分に実践した私が,今は,国際協力機構(JICA)の委託を受けてアフリカのルワンダの教育にかかわるに至っているのです。
もし,プログラミング教育を施さなかったら,私は観光目的以外で海外に出ることは決してなかった思います。

日本が世界から愛されている今の時代に,世界に誇れる教育を次々に形にしていくことも,日本の小学校教師の成すべき事の一つだと思っています。

ところで,今月の「チーム算数」は13日(土)です。
場所はいつものジョナサンです。
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